artscapeレビュー
近藤哲雄《するところ》
2009年11月15日号
[東京都]
竣工:2009年
SANAA出身の建築家近藤哲雄による、200平米程度の築40年の古い工場の改修。一階が印刷所、二階が地域の人たちがワークショップ等を通じて交流するためのスタジオ兼事務所。紙や印刷を活かしたワークショップが行なわれるという。外壁は白く塗られ、3カ所に大きな開口部が開けられた。工場という閉じた空間を、街に開いていく意図が込められているという。また二階の床の一部が大きく切り取られ、上下階がつながり、一階の印刷機の様子を見ることができる。特に、開口部の開き方が興味深い。道路に面した長辺側面の開口部は、建物全体のプロポーションを異化させるくらい巨大であり、まるで外壁が「紙」でできているかのような印象もある。この開口部の大きさとリズムからは、ル・コルビュジエのオザンファンの住宅の開口部も想起された。サッシ枠の見付けがかなり細く、そのことが開口部の大きさを余計に引き立てていたといえよう。40年の間に開けられた複数のタイプの開口部が同居していることも面白い。抽象的な空間を獲得すると同時に、歴史を内包し、下町の空間にもなじんでいた。
写真提供:近藤哲雄
2009/10/17(土)(松田達)