artscapeレビュー

安藤忠雄『建築家 安藤忠雄』

2009年11月15日号

発行所:新潮社

発行日:2008年10月24日

安藤忠雄、初の自伝である。初というのが意外に感じられるのは、それだけ彼の生涯が知られているからだろう。ともあれ、本書は、いわゆる作品集の形式ではなく、個人の生きざまの物語を通じて、建築の思想が語られる。つまり、自伝だが、同時に建築のエッセンスがつまっている。安藤にとっては、それだけ生きることと建築をつくることが分ちがたくつながっているからだろう。生い立ちや旅のはなしは有名だが、まず興味深いのは、ゲリラ集団として位置づけられている事務所の組織論を冒頭で論じていることだ。仕事論としても読めるだろう。また自伝では、安藤の反骨精神が、1960年代の既成のものを否定するアヴァンギャルドと大阪人の気質に由来していることがうかがえる。

2009/10/31(土)(五十嵐太郎)

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