artscapeレビュー

都市デザイン研究体『日本の広場』

2009年11月15日号

発行所:彰国社

発行日:2009年5月

最近、広場研究をやっているのだが、ちょうどいいタイミングで今年復刻版が出たのが、『日本の広場』である。もともとは『建築文化』1971年8月号の特集を書籍化したものだ。やはり、1960年代の初頭に同誌に特集が組まれた「日本の都市空間」や「都市のデザイン」がのちに単行本になったのも一連のシリーズの続編であり、伊藤ていじが仕かけている。筆者が大学院生の頃、エディフィカーレの同人とともに『建築文化』に都市の特集を持ち込んだとき、実はこれらの事例がモデルだった。さて、『日本の広場』は、先行する二冊と同様、フィールドワークと事例収集を行ないつつ、さまざまなキーワードによって事象を整理している。しばしば日本に広場はないと言われるが、本書は神社や団地、街角や河原において日本的な広場のあり方を探っているのが興味深い。西欧が固定した広場の空間をもつのに対し、日本ではアクティビティや装置などによって生じるという。時代を感じさせるのは、デモや新宿西口広場のフォーク集会などが紹介されていること。なるほど、人々が路上を占拠した1960年代終わりの雰囲気が、本書を生みだした契機のひとつだったことは間違いないだろう。

2009/10/31(土)(五十嵐太郎)

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