artscapeレビュー

村田兼一「屋根裏の写真師」

2009年11月15日号

会期:2009/10/02~2009/10/21

ギャラリーミリュウ[東京都]

前に一度、大阪郊外にある村田兼一の自宅兼スタジオを訪ねたことがあるのだが、実に面白かった。彼の家は戦前に建てられたという旧い木造家屋で、本当に屋根裏部屋がある。そのあまり広くはないスペースをスタジオに改造し、照明や小道具を持ち込んで、秘密めいた撮影を続けているのだ。
そこで繰り広げられているのは、年若い女の子たちが裸体で淫らなポーズをとる、あまりお行儀がいいとはいえないセッションである。だが、そうやって撮影され、きめ細やかな手彩色を施されたプリントは、不思議な優しさと安らぎを感じさせるものになっている。おそらく、モデルの女の子たちと村田との間に成立しているコミュニケーションの形が独特なのだろう。無理強いされたような窮屈さはまったく感じられず、モデルはむしろのびのびと、体の隅々までも開ききっているように感じられるのだ。写真のほとんどは、村田が設定した“物語”に沿うように撮影されているのだが、それもまたあまり強制力を持つことがない。写真全体に漂うゆるさと、性的なイマジネーションのエスカレートぶりが絶妙なバランスを保っている。おそらく、あの奇妙な「屋根裏」のスペースが、魔術的な効果を発揮しているのではないだろうか。

2009/10/14(水)(飯沢耕太郎)

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