2021年12月01日号
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artscapeレビュー

杉本博司「光の自然(じねん)」

2009年11月15日号

会期:2009/10/26~2010/03/16

IZU PHOTO MUSEUM[静岡県]

新しく静岡県東郡長泉町のクレマチスの丘に開館したIZU PHOTO MUSEUMのプレス・ツアーに出かけてきた。隣接するヴァンジ彫刻庭園美術館では、2006年以来松江泰治、古屋誠一、川内倫子らの写真展が開催されてきたが、その実績を踏まえて、写真専門の美術館としてオープンしたのがIZU PHOTO MUSEUMである。建物と中庭の設計は、オープニング展の招待作家である杉本博司自身であり、展示室が二部屋しかない小ぶりな美術館だが、すっきりとまとまっていて使い心地はよさそうだ。細部まで杉本の「モンドリアン風の数寄屋造り」というコンセプトが貫かれている。
オープニング展の「光の自然」は、静電気を放電させて山水画を思わせるイメージを印画紙にフォトグラムで定着した「放電日月山水画」(長さ、15メートル)と、写真術の発明者であるW・H・F・タルボットが1830~40年代に撮影したカロタイプのネガをポジ画像として拡大した「光子的素描(フォトジェニック・ドローイング)」シリーズの二部構成。写真のオリジンというべき光そのものの生成と物質化の過程を追体験するという展示は、新しい写真美術館のスタートにふさわしいものといえるだろう。新幹線・三島駅からシャトルバスで20分ほどかかるという立地条件は、たしかにあまりいいとはいえないが、周囲の環境はとてもよく、一日をつぶしても充分お釣りが来る。これから年3回程度の企画展を開催していく予定。次回は2010年4月から、アメリカの写真史家、ジェフリー・バッチェンが企画する「時の宙吊りー生と死のあわいで」展が開催される。

2009/10/23(金)(飯沢耕太郎)

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