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高松伸《国立劇場おきなわ》

2009年11月15日号

[沖縄県]

竣工:2003年

沖縄伝統芸能の保存と育成のための国立劇場。上部にいくにつれてせり出した、PCパネルによる菱形格子状の外壁は、沖縄の伝統住宅の壁から引用されているという。この外観の存在感は圧倒的だった。土着建築言語が翻案され、抽象性と具象性が同居するような不思議な印象を受けた。沖縄には現代建築がいくつもあるが、沖縄の人に聞いてみると、沖縄的なるものを異なって解釈したうえで強調されている場合があるという。その場合は現地の人が見て沖縄的には決して見えない。オリエンタリズムの視線が「日本」を誤って強調してしまう場合に似ているのだろう。しかし、高松氏の建築は、土着建築言語の土着的な強調は行なわない。むしろ、現代建築の視点からの解釈を行なっている。また、内部に入るとミースの装飾的H鋼、テラーニ的に直交する梁が強調された軽やかな天井など、近代建築言語へのオマージュ(といえそうなもの)も散見された。土着建築言語も近代建築言語も、いわば他者の言語であるが、それらがまったく違和感なくひとつの建築として統合的に昇華していたように感じられた。

2009/10/26(月)(松田達)

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