artscapeレビュー

成実弘至編『コスプレする社会』

2009年11月15日号

発行所:せりか書房

発行日:2009年6月

さまざまな論者が、タイトル通り、コスプレをキーワードに若者の文化現象を読みとく。ヴィジュアル系やタトゥー、ドラァグクイーンなど、それらはまさにもうひとつのアイデンティティをまとうために行なわれる。だが、アンダーグラウンドのサブカルチャーとして出発したスタイルも、すぐに消費され、記号化し、本来の意味が変容してしまう。今年、筆者は編著として『ヤンキー文化論序説』を刊行したので、とくに難波功士の「不良スタイル興亡史」を興味深く読んだ。彼は、ヤンキーが70年代の不良の遊び着=非学校文化を起源とするのに対し、ツッパリは反学校的生徒文化だと位置づけている。だが、不登校や学級崩壊という新しい状況も生じ、学校への対抗という意味を失い、もはや日用としてのツッパリのスタイルは恐竜と化し、卒業式などのイベントで目立つためのアイテムとしてのみ残っているという。

2009/10/31(土)(五十嵐太郎)

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