2021年09月15日号
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artscapeレビュー

金子隆一/アイヴァン・ヴァルタニアン『日本写真集史 1956-1986』

2009年12月15日号

発行所:赤々舎/Goliga Books

発行日:2009年11月1日

赤々舎とGoliga Booksから共同出版された『日本写真集史 1956─1986』は画期的な「写真集の写真集」である。ここ10年あまり、欧米諸国では日本人写真家の仕事に対する興味が高まり、写真集の古書価格は信じられないほどの勢いで急騰した。さすがに昨年来の世界同時不況で、その上昇にはストップがかかったのだが、なお100万円単位で取引される写真集もかなりある。ところがそれらの写真集についての情報は、かなり断片的であり偏ったもので、参照すべき文献もあまりなかった。その意味で本書の出版は、欧米諸国だけでなく、日本国内の写真集コレクターにとっても朗報というべきだろう。
本書は濱谷浩『雪国』(毎日新聞社、1956年)から深瀬昌久『鴉』(蒼穹舎、1986年)まで、およそ30年間にわたって刊行された39人の写真家(及びグループ)の41冊の写真集(1979年刊行の北島敬三『写真特急便「東京」No.1-12』を12冊として数えれば52冊)を扱っている。まさに日本の写真集の「黄金時代」を代表する写真集ぞろいの強力なラインナップといえる。著者の一人である東京都写真美術館専門調査員、金子隆一は、蔵書が2万冊を超えるという世界有数の写真集コレクターであり、本書におさめられた写真集はその所蔵本から、元Apertureの編集者だったアイヴァン・ヴァルタニアンの協力を得て選び出された。写真集のページをそのまま複写してレイアウトすることで、染みや汚れ、写真家の署名なども写り込んでおり、それが逆に生々しい臨場感を醸し出している。いずれにせよ、日本の写真集に多少なりとも関心を持つ者にとっては必読文献であり、ページをめくっているだけで半世紀前にタイムスリップするような気分を味わうことができるだろう。

2009/11/11(水)(飯沢耕太郎)

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