artscapeレビュー

佐藤淳一『恋する水門 FLOODGATES』

2009年12月15日号

発行所:ビーエヌエヌ新社

発行日:2007年8月13日

この写真集も「景観開花。」にあわせて、手にとった。東北大の工学部卒の佐藤は、写真作家となり、水門に魅せられ、多くの場所を訪れ、撮影してきた。筆者も、数年前に宮城県美術館の展覧会において初めて彼の写真に出会った。興味深いのは、赤、青、緑など、巨大な門扉がカラフルであること。通常、水門の造形はモダニズム的な美学から発見されるものだが、その色彩が機能とは関係ないという意味では、ポストモダンに突入している。ところで、佐藤が現場でゲートの色は誰が決めるのかと尋ねたところ、「所長の趣味とかじゃないですかねえ」という答えが返ってきたらしい。そのテキトーな脱力具合がいかにも日本らしい。

2009/11/30(月)(五十嵐太郎)

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