2021年09月15日号
次回10月1日更新予定

artscapeレビュー

ムラギしマナヴ「水墨画と武者絵展」

2009年12月15日号

会期:2009/11/01

Id Gallery[京都府]

10年をかけて描き溜めてきた武者絵(!)と、それとは異なる趣きで描いた水墨画を発表。1日だけの個展だったので諦めかけていたけれど、運良く見逃さずにすんだ。空間にところせましと展示されていた武者絵がとにかく凄い。サムライ(?)の表情やその動作の描写、生々しい筆致に目が吸い寄せられる。画面から言葉や音が飛び出てきそうな画力の説得力に感動。水墨画は円山派や狩野派の絵画のイメージと重なるものが多く、記憶をくすぐる。描かれた動物や人物のモチーフがまたチャーミングなのでやたら笑いがこみ上げるのだが、強烈だったのは「お金かしてください」という筆書きとともに描かれた微妙な表情の子犬の絵。何の絵のモチーフだったかとモヤモヤしていたら、その日の晩、一緒に会場を訪れた友人から「これか?!」と円山応挙《朝顔狗子図杉戸》の画像つきのメールが届いて嬉しくなった。史実や、その脈絡を整理したうえで描かれたスケッチも半端な量ではなく圧巻。絵の巧さやウィットに富んだユーモアセンス、それに丁寧な仕事ぶりに裏打ちされたムラギしさんの偏執的な面がうかがえる魅力的な個展だった。

2009/11/01(日)(酒井千穂)

2009年12月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ