2021年10月15日号
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artscapeレビュー

オラファー・エリアソン あなたが出会うとき

2009年12月15日号

会期:2009/11/21~2010/03/22

金沢21世紀美術館[石川県]

噂に違わず、自分の知覚がぐらぐらと撹乱させられる、素晴らしい展覧会だった。オラファー・エリアソンについて、あらためて紹介する必要もないだろう。1967年生まれ、ベルリンとコペンハーゲンに在住の現代美術作家であり、光や風といった自然界の要素を用いながら、人間の知覚にうったえかける現象を多く作品にしている。本展覧会は、金沢21世紀美術館の開館5周年を記念して開かれた大規模な個展であり、日本での個展は2005/2006年の原美術館についで二回目となる。
もっとも印象的だったのは《あなたが創りだす空気の色地図》だった。部屋に入った瞬間に、虹のなかに飛び込んでしまったかのような感覚に襲われる。赤から青へ、そして黄色へとグラデーショナルに色のついた空間である。三色の蛍光灯による光が、人工的な霧にあてられるという比較的シンプルな仕組みであるが、実際には色のついた空間を歩いているかのような体験である。しかもその空間には一点として同じ色がないかのように、微妙な配合で混じり合い、一歩歩くごとに、異なった色空間が立ち現われる。建築では、石上純也が《レクサスのための会場構成》(2005)において、霧の空間をつくりだした。石上はインテリアを風景化したのに対し、エリアソンは空間そのものに色をつけた。石上の手法は限りなく美術に近いがやはり主題は建築的な事象であり、エリアソンはまさに建築が扱うはずの空間をより深く操作しているけれども、だからこそ建築の手が届かない美術的な事象であると感じた。全部で20ほどある作品は、どれもこのように知覚を揺さぶり、認識のシステムを再考させるような作品であった。
もうひとつ興味深かったのは、それぞれの作品がこの美術館の空間をうまく読み解いた上で設置されたものであったことだ。例えば黒い巨大なボックスの、目線のあたりにのみ水平の隙間が開いていて一条の光が洩れてくる《微光の水平線》は、有料ゾーンと無料ゾーンの間の光庭を利用することで来館者の誰もが展示の存在に気づくと同時に、光庭を黒く覆うことでこの美術館をよく知っている人に大きな異化効果を与えるだろう。作品と美術館の空間の親和性が非常に高い展覧会であった。

展覧会URL:http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=19&d=460

2009/11/30(月)(松田達)

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