2021年09月15日号
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artscapeレビュー

芝田文乃「いったりきたり日記/2008年版」

2009年12月15日号

会期:2009/11/07~2009/11/15

サードディストリクトギャラリー[東京都]

ポーランド文学の優れた翻訳者でもある芝田文乃は、2000年から毎年「いったりきたり日記」の展示を始めた。ということはもう10年目。全部見ているわけではないが、定例行事のような楽しみがある。
今年の展示の内容も、いつも通りの東京とポーランドのクラクフを「いったりきたり」する日々のスナップである。最初の頃は、日本とポーランドの環境や人びとの暮らしの違いを見せたいという意図もあったようだが、最近の展示ではそのあたりが緩んできていて、二つの都市の写真の間には際立った違いは感じられない。今回は東京が17点、クラクフ(とその周辺)が15点の写真が並んでいるのだが、その境界線がほとんど消失していて、いつのまにか違う場所に行って戻ってくる感じなのだ。
両者の写真の質が同じなのは、スナップシューターとしての芝田の姿勢が一貫しているからだろう。被写体に過度の思い入れをすることなく、傍観者としての距離感を保って、すっとカメラのフレームにおさめていく。「いかに自分を空っぽにしてシャッターを切り続けられるか」をいつも心がけているというが、これはいいスナップシューターの必要条件というべきものだろう。とはいえ、芝田の写真が無国籍で無味乾燥かといえば、そんなことはまったくない。2008年現在の東京とクラクフの空気感がきちんと写り込んでいる。最近は、こういう味わい深いスナップショットを見る機会も次第に減りつつあるように感じる。そろそろ写真集にまとめることができるといいのだが。

2009/11/12(木)(飯沢耕太郎)

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