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artscapeレビュー

『a+u 2006年11月臨時増刊 セシル・バルモンド』

2009年12月15日号

発行所:エー・アンド・ユー

発行日:2006年10月30日

日本語で読めるセシル・バルモンドの作品集として、もっともまとまっている本だと言えるだろう。セシル・バルモンドはスリランカ出身の構造家であり、オヴ・アラップ&パートナーズで30年間勤務し、OMAやダニエル・リベスキンド、伊東豊雄ら世界的な建築家らと、さまざまの挑戦的なプロジェクトに参加してきた。彼らの革新的なアイディアを建築化するうえで、決定的に重要な構造的アイディアが、バルモンドからいかに出てきたのかを見ることができるだろう。間違いなく、世界でもっとも刺激的な構造家であるといってよい。本書は、セシルのこれまでの軌跡を、グリッド、生成するライン、数字、先端幾何学ユニット、デリリウム(錯乱)といったいくつかのカテゴリーに分けて追っている。ほとんど数学者であり哲学者であるともいえるような思考展開が、彼のスケッチやちりばめられた文章から見えてくる。しかしむしろ彼は音楽家だといえるかもしれない。彼の音楽好きは有名であり、「音楽としての構造」というテキストが示しているように、彼の構造の根幹にはリズムがある。そう思って本書を開いていくと、まるで音楽が聴こえてくるかのような本にみえてきた。なお、2010年1月16日から3月22日まで、東京オペラシティアートギャラリーにて「エレメント 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展が開催される。体験型の展覧会だと聞いており、展示が期待される。

関連URL:http://www.operacity.jp/ag/exh114/

2009/11/28(土)(松田達)

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