artscapeレビュー
2012年01月15日号のレビュー/プレビュー
プレビュー:京都・京町家ステイ・アートプロジェクト vol.1─アートと暮らす出会う京町家2012─「アート町家作品展」
会期:2012/01/21~2012/01/27
和泉屋町町家、筋屋町町家、石不動之町町家、美濃屋町町家[京都府]
京都の四条河原町に程近い4軒の町家を舞台に、地元ゆかりの4作家がそれぞれの表現方法で空間自体をつくり上げる。4名の作家とは、陶芸の近藤高弘、映像の大西宏志、日本画の畠中光享、染色の福本潮子である。また本展の後、会場は「町家ステイ」としてそのまま宿泊施設となる。京都では町家での展覧会自体は決して珍しくないが、それがリノベーションや宿泊という事業と一体化して展開されるのは珍しい。極めて地域的かつ可能性が感じられる試みだけに要注目である。
2012/01/10(火)(小吹隆文)
内田繁『戦後日本デザイン史』
日本を代表するインテリア・デザイナーで、桑沢デザイン研究所所長をつとめた、内田繁の最新刊。戦後、日本のデザインが時代とどう向き合ってきたのかを振り返ると同時に、「モノ」から「情報」へと大きな転換期を迎えた、今日のデザインに、ひいては私たちの日常に示唆を与えてくれる。できるだけ多くのジャンルにまたいで記述することや、自分の体験をふまえることを重視したと著者自身が冒頭で述べているように、戦後から2010年までの、日本のグラフィック、インテリア、ファッション、プロダクトデザイン界の出来事を、10年ごとにまとめている。第1章:戦後デザインの出発──50年代、第2章:工業化社会への疑問──60年代、第3章:工業化社会から情報化社会へ──70年代、第4章:デザインの多様性──80年代、第5章:環境の時代に生きるデザイン──90年代~2010年といった構成。たとえば、1960年に日本で初めて開催された国際的なデザイン会議として有名な「世界デザイン会議」で、ハーバード・バイヤーが行なった特別演説など、当時の資料や記録を直接引用する部分があると思えば、戦後の日本のデザインを形作ってきたひとりであるだけに、思想や背景はもちろん、当時を雰囲気までを上手く織り交ぜて、読む人を飽きさせない。よく整理され纏められていて、なお面白い。専門書としても、一般書としても遜色ない一冊である。[金相美]
2012/01/15(日)(SYNK)
カタログ&ブックス│2012年1月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
石子順造的世界──美術発・マンガ経由・キッチュ行
美術評論を主軸としながら「表現」と呼ばれる領域を生活者のレベルから具体的に捉えようと試み、いわゆる「美術」を超えてマンガや演劇、芸能、果ては誰も気にとめない「ガラクタ」の類いにまで論の対象を広げた評論家、石子順造(いしこじゅんぞう)(1928年〜1977年)。石子の眼を通じて1960年代から1970年代にかけての、ひいては日本の文化を眺め、見直した府中市美術館での展示をまとめたカタログです。[美術出版社サイトより]
ART TRACE PRESS 01
2011年8月24日 ART TRACE GALLERYにて開催された松浦寿夫×林道郎による対談記録、沢山遼による書き下ろしテキストの他、キャロル・C・マンクーシ=ウンガロ、マイケル・フリード、ウイリアム・ルービンの、ポロックに関する重要文献の初翻訳を掲載。日本初となる回顧展、『生誕100年 ジャクソン・ポロック展』(愛知県美術館 / 東京国立近代美術館)をご覧いただくにあたり、必読の一冊です。[ART TRACEサイトより]
現代建築家コンセプト・シリーズ11 長谷川豪──考えること、建築すること、生きること
1977年生まれの若手建築家、長谷川豪による初の著作集。全体をゆるやかに3つの章「考えること」「建築すること」「生きること」に分節し、長谷川豪の建築作品とそこに至る思考をあきらかにする。建築と生、リアリティとヴィジョンなど、さまざまな遠近を地続きのものとして捉え、建築という形を与えてゆく様子に、読者は彼の思考のやわらかさとその建築の可能性を感じるだろう。[INAX出版サイトより]
にほんごっ子
博報財団が設立以来大切にしている日本語や日本語教育について、その背景にある風土・ 文化も含めて様々な角度から探究する、新しいスタイルの広報誌です。日本語を話し、日本語を教えるすべての皆様に読んでいただきたいと考えています。[博報財団サイトより]
聖なる銀──アジアの装身具
2011年12月よりINAXギャラリーにて開催されている「聖なる銀 アジアの装身具 展」のカタログ。アジアの近・現代に見られる装身具より特徴的な約100点を披露。各地域における形態と文様に表れた深意を探り、銀の歴史や加工などにも触れながらビジュアル豊富に展開する。アジアは銀の装身具の宝庫。広大な地域を巡りながら民族のシンボルに出会える一冊。[INAX出版サイトより]
通天閣──新・日本資本主義発達史
塔から眺めた一大資本主義パノラマ。将棋の王様・阪田三吉の軌跡と大大阪の空間性、新世界の荒廃と飛田遊廓、ジャンジャン町の隆盛。産業資本と大阪政界の思惑の一方で、借家人同盟、野武士組、女給たちが立ち上がる……塔のみえる場所で、人々は彷徨い、遊び、闘い、そして何を生んだか? 圧倒的密度で描く、大阪ディープサウス秘史![青土社サイトより]
2012/01/16(月)(artscape編集部)