artscapeレビュー

2012年01月15日号のレビュー/プレビュー

森村泰昌 新作展「絵写真+The KIMONO」

会期:2011/12/28~2012/01/10

大阪高島屋 6階ギャラリーネクスト[大阪府]

今年で創業180周年を迎える高島屋からのオファーによる本展。昨年夏に東京で開催済みなので、ご覧になった方も多いだろう。森村は、北野恒富が描き、昭和4年に高島屋のポスターとして採用された《婦人図》をモチーフにした新作6点と、彼が1980年代に制作した構成主義風の版画、その版画をモチーフにした着物などを出品した。また作品中の着物のなかには小磯良平や竹内栖鳳の絵画から引用されたものもあった。かつて大阪画壇で活躍した北野と、現在の大阪を拠点とする森村がクロスオーバーし、小磯と竹内を絡めることで京阪神という横櫛も通されている。ひとつの作品のなかに重層的に意味を込めるのが得意な森村らしい個展であった。

2011/12/28(水)(小吹隆文)

五十嵐研ゼミ合宿 2日目:藤本壮介《T-HOUSE》、生物建築舎《天神山のアトリエ》《萩塚の長屋》ほか

[群馬県]

2日目は、藤本壮介の《T-HOUSE》、生物建築舎の《天神山のアトリエ》と《萩塚の長屋》、CAn+Catの《ぐんま国際アカデミー》、宇野享の《太田の長屋》をめぐり、太田駅前にて飲んでから解散する。今年は学生が増え、OBも参加したことで、30名近い大所帯で移動した。前橋のアート・コレクターが暮らす《T-HOUSE》では、近くにコインパーキングを見つけられず、そばの神社の境内に止める際、地元の人に声がけすると、やはりこの住宅はよく知られていた。筆者は2度目の訪問だったので、常設展のように、固定して置かれている作品も、空間を決定する重要な要素になっていることに興味をもった。別ルートから前橋工科大学の学生も見学に合流したのだが、施主によると、同時に室内に人がいる最高記録だったらしい。《天神山のアトリエ》は、まわり四方を壁で囲み、天井すべてガラス、床は土が連続しており、ほとんど外部空間と変わらない室内だった。四季や気候の変化、あるいはまわりの状況をダイナミックに反映する空間といえよう。さらにドラキュラの棺と呼ばれる地下の寝床をもち、建築家自身が暮らす驚くべき実験住宅である。そして《太田の長屋》では、2つ賃貸部屋を見せてもらい、一見どのユニットも似ているけれど、想像以上に異なるバリエーションで空間が展開していることに感心させられた。

写真:上から、藤本壮介《T-HOUSE》、生物建築舎《天神山のアトリエ》、宇野享の《太田の長屋》

2011/12/29(木)(五十嵐太郎)

プレビュー:金魚(鈴木ユキオ)『揮発性身体論 「EVANESCERE」/「密かな儀式の目撃者」』

会期:2012/02/03~2012/02/05

シアタートラム[東京都]

今年は、日本の舞台芸術が「震災以後」のマインドに包まれた一年だった。正直、そのマインドに巻き込まれ過ぎの印象を受けた上演も多かった。そのなかでぼくが励まされたのは、舞踏系の振付家・ダンサーたちの揺るがない姿勢だった。揺るがないのは当然だ。死や病や「立てない」という状況からダンスを生み出すのが舞踏なのだから。浮かれた日常の底に普段は隠されている人間の闇から、舞踏の「踊り」は始まる。だから震災があろうが、舞踏の作家たちは淡々とマイペースを貫けたに違いない。例えば、大駱駝艦がまだ電車の暖房も街中の明かりも消されていた震災直後に『灰の人』というタイトルの上演を決行したのは、休演する作品が相次ぐなかできわだっていた。大橋可也&ダンサーズの『OUTFLOWS』は希望よりも絶望に目を向けていて、そのことがむしろよかった。子どもたちをダンサーにして鈴木ユキオが『JUST KIDS』という作品をつくったことも強く印象に残っている。舞踏系以外では、矢内原美邦ほうほう堂も自分たちの力量を発揮していて、心強かった。ということで、個人的に来年はダンスに注目していきたいと思っている。なかでも金魚(鈴木ユキオ)の新作『揮発性身体論 「EVANESCERE」/「密かな儀式の目撃者」』(シアタートラム)はそのタイトルが示すように、彼の新しいダンス論がパフォーマンスのなかで呈示されるに違いない。「揮発性」とは? 舞踏の未知の局面が示されることになるのかどうか、おおいに期待したいところだ。

【予告】鈴木ユキオ新作「揮発性身体論」 Yukio Suzuki "Volatile body"

2011/12/31(土)(木村覚)

草間彌生 永遠の永遠の永遠

会期:2012/01/07~2012/04/08

国立国際美術館[大阪府]

マーカーで描いた線画を同寸でシルクスクリーン版画にした《愛はとこしえ》シリーズ、極彩色の《わが永遠の魂》シリーズ、最新作の自画像など、近作約100点を出品。人間の眼や顔、ドット、植物を思わせるギザギザ模様などがせめぎ合い、混沌とした生命力や呪術性を放つのが、現在の草間ワールドであるようだ。それにしても前述の絵画シリーズはどれも一辺1メートルの大作ばかり。オーバー80歳とは思えぬ制作意欲には驚くばかり。

2012/01/06(金)(小吹隆文)

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プレビュー:LOVE POP! キース・ヘリング展─アートはみんなのもの─

会期:2012/10/21~2012/02/26

伊丹市立美術館[兵庫県]

本展のリリースで、久々にキース・ヘリングのことを思い出した。彼が日本で話題になったのは1980年代半ばのこと。当時、美術とは無縁だった私にも、雑誌やテレビの記事を通して彼の活躍は伝わっていた(テレビ番組は『11PM』で、今野雄二さんの語りだったと思う)。しかし、いまの日本で彼の名が挙がることはことは滅多にない。なぜ今彼の個展なのか? その辺りを考えながら本展を見たいと思う。

画像=《Best Buddies》1990年、シルクスクリーン
� Keith Haring Foundation、中村キース・ヘリング美術館蔵

2012/01/10(火)(小吹隆文)

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2012年01月15日号の
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