2019年09月01日号
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artscapeレビュー

2012年01月15日号のレビュー/プレビュー

細倉真弓 写真展「KAZAN」

会期:2011/12/02~2012/01/15

G/P GALLERY[東京都]

細倉真弓は1979年生まれ。2005年に日本大学芸術学部写真学科を卒業後、内外のグループ展に参加するなど順調にキャリアを伸ばしてきた。やや意外なことに、今回がはじめての個展になる。「KAZAN」のシリーズはポートレート、ヌード、風景、結晶体のようなオブジェなどの組み合わせ。あまり声高に自己主張することなく、やや押さえ気味に、どこかくぐもった陰鬱な雰囲気の写真を並べている。根こそぎに横倒しになった樹の近くに人物を配した風景など、手探りで心に響くリアリティを見出していく姿勢がストレートに表われている写真が多く、写真家としての成熟を感じた。以前の彼女の写真には勢いはあったものの、どこか「急ぎ過ぎ」ていて、肝腎なものを取り落としているようなところもあったのだ。着実に自分の作品世界をつくり上げつつあるのではないだろうか。もうひとつの新作は、アルミニウム板にポートレートや静物を焼き付けたシリーズ。こちらは19世紀に流行した着色ティンタイプを思わせる、やや古風な雰囲気だ。悪くはないのだが、2つのシリーズのつながりがうまく見えないので、見る側は混乱してしまう気もする。それでも彼女の表現力が、さまざまな手法を自在に使いこなせる段階に達していることはわかった。なお、アートビートパブリッシャーズから同名の写真集も刊行されている。

2011/12/04(日)(飯沢耕太郎)

「ベルリン国立美術館展」記者発表会

会期:2012/06/13~2012/09/17

国立西洋美術館[東京都]

またフェルメールがやって来る。2012年6月13日から国立西洋美術館で始まる「ベルリン国立美術館展」で、《真珠の首飾りの少女》が本邦初公開されるのだ。ややこしいことに、同時期(6月30日から)同じ上野の東京都美術館には《真珠の耳飾りの少女》が来ることになっている。有名なのは「耳飾り」のほうだが、「首飾り」は初来日(「耳飾り」は今回で3度目)なので今年はこちらをひいきにしたい。それにしても、2011年の2回計4点に続き、2012年も2回計3点のフェルメールが来るのだから異常というほかない。まあ日本人の名画好きも、それを支える経済力もまだまだ健在とすればおめでたい限りだが。フェルメール以外の見どころは、同じ17世紀オランダのレンブラント派による《黄金の兜の男》。この作品、かつてレンブラントの代表作と見られていたのに、厳密な調査の結果「レンブラント派」の作品に格下げられてしまったのだが、そのことでかえって有名になったといういわくつきの作品なのだ。この目でとくと観察したい。ほかにもミケランジェロの素描、ドナテッロのレリーフ、クラーナハのヌード画などオールドマスターズを堪能できそう。

2011/12/05(月)(村田真)

松井紫朗「Like when you miss button your shirt」

会期:2011/11/11~2011/12/06

BLDギャラリー[東京都]

巨大なバルーンを使ったインスタレーションで知られる松井の平面作品。大きく分けて2種類あって、ひとつは、ランドアートのようなシュールなイメージを描いたペインティング。かたわらに人が小さく描かれていて少し説明的。もうひとつは、バルーンなどの立体作品を平面化してタブローにしたもの。ビニール状の平面をたわませたり、絵具をビニールみたいにべっとり塗ったり。こちらのほうがバルーン作品とベタにつながってる感じがする。ベタッとしているし。

2011/12/05(月)(村田真)

作品は、ここにあった。──現代アートの考古学

会期:2011/12/1~2011/12/17

銀座ギャラリー女子美[東京都]

この展覧会らしからぬ展覧会名を聞いてなつかしいと思う人はもはやほとんどいないでしょうね。いまちょっと調べたら、1980年に神田ときわ画廊で開かれていた。展示内容はほとんど覚えていないが、たしか「インスタレーション」という言葉がデビューして間もないころであり、そうした仮設構築作品の検証を目的に企画されたのではなかったかと記憶する。はっきり覚えているのは企画の中心に北澤憲昭さんがいたこと。今回もその北澤さんが中心となって、おそらく30年前の企画を敷衍しようとしたのではないかしら(女子美の金を使って)。展覧会構成は、まず飯山由貴が会場内に非公開でインスタレーションをつくり、それを北澤、足立元、福住廉、暮沢剛巳の4人の批評家が記述し、同時にそれぞれ写真を撮る。作品は一部を残して解体され、批評家の文章と写真、動画などの記録が展示されるというもの。意外だったのは、4人の批評家による文章が作品の様態についての記述にとどまらず、それぞれの作品解釈や背景描写にまで踏み込んでいたこと(とくに暮沢の逸脱ぶりが激しい)。「発表されなかったインスタレーションの作家本人以外の者の手による記録のみを公開する、はたしてそのインスタレーション作品は本当に“不在”なのだろうか?」を問うならば、もっと作品の様態に関する徹底した客観的記述が求められると思ったのだが。ともあれ、この企画の効用は、飯山のオリジナル作品を見てみたいと思わせたことだ(じつは同展終了後にそのインスタレーションが再現されたが、火曜という変則的な休廊日に行ってしまい見られなかったヨーン)。

2011/12/05(月)(村田真)

ふなだかよ展

会期:2011/12/05~2011/12/10

O Gallery eyes[大阪府]

出品作品は絵画と写真に大別される。絵画は作者の幼少時の写真をモチーフにしたもので、母の愛を一身に受ける幸福感に満ちている。一方、写真は料理が器から溢れ返った状態を写しており、グロテスクな趣が強い。作者はこれら2種類の作品を並置することにより、共依存の母子関係と、偏愛が人間形成に与える影響について表現しているのだ。ただしネガティブ一辺倒ではない。偏愛もまた人間の根源にあるものだという思いを、ほかならぬ彼女自身が持っているからだ。彼女の作品は矛盾する両義性を持つが、それゆえ絶望から救われているのかもしれない。

2011/12/05(月)(小吹隆文)

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