2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年02月15日号のレビュー/プレビュー

おとなが学び合うこどもの声&フォーラム「研修バスツアー──メリーゴーランド(三重県四日市)へ行こう」

会期:2012/01/29

子どもの本専門店メリーゴーランド[三重県]

RACOA企画の研修バスツアー。この1週間前に事前勉強会で紹介されたエッセイ集『子どもの本屋はメリー・メリーゴーランド』(晶文社、2001)の著者、増田喜昭さんの遊び心に溢れた幅広い活動とその人物像にますます興味が湧き、さっそく本も取り寄せて読了。「あそびじゅつ(遊美術)」というワークショップ教室をはじめ、2009年にオープンした「四日市こどものまち図書館」の活動など、町の子どもたち(や大人達)との交流やその在り方に新鮮な感動を覚えてさらに胸が躍った。昼食の後、ミュージシャンであり美術家でもある「あそびじゅつ」の講師、重盛ペンギンさんのトーク。「あそびじゅつ」のこれまでの活動や方針、エピソードなどが語られた後、ペンギンさんとともに全員で増田喜昭さんの本にも登場する近所の神社、その先にある「四日市こどものまち図書館」の見学に出かけた。「四日市こどものまち図書館」は増田さんが理事を務めるNPO法人「四日市こどものまち」が運営する図書館。といっても建物は古い民家がそのまま利用されていて、書架が並ぶ空間は畳。掘りごたつもある。土曜にオープンしているこの図書館、来る子どもたちは本やマンガを読んだり、弁当を食べたりごろごろしたり、好き勝手に過ごして行くのだという。その後、別のイベントで増田さんの講演が行なわれるというので一行は再び「メリーゴーランド」へ。正確にはこの建物は1階が書店「メリーゴーランド」、2階が「あそびじゅつ」の教室、3階はさまざまなイベントや習い事の教室に使われる「ときわ文化センター」というホールになっている。ホールで行なわれた講演は、おもに増田さんが欧米のチルドレンズミュージアムを廻ったときのリポートだった。「四日市こどものまち図書館」の活動もそのときの衝撃と感動から始めたのだという。そしてその後、今回のRACOAバスツアーのためのトークが行なわれる。電車を使って「メリーゴーランド」を訪ねてくる人が道を聞くだろうと思われる駅前のタバコ屋のおばあさんに「あっちだ」と指差してもらいたいがゆえに看板を設置しなかったというエピソードをはじめ、増田さん独特の人々とのコミュニケーションの取り方や、地域の人々との交流にまつわる話が特に魅力的で、アートの活動においても参考にしたいものだった。それにしても素晴らしい話術。ふと目を移すと、他の参加者たちが、まさに目を輝かせて食い入るような表情で話に聞き入っていたのが忘れられない。収穫の多い有意義なバスツアーだった。再びRACOAのスタッフに感謝。


左=四日市こどものまち図書館
右=同、1階


「あそびじゅつ」のワークショップルームでのトーク

2012/01/29(日)(酒井千穂)

菱田雄介「border/McD」

会期:2012/01/18~2012/02/05

Bloom Gallery[大阪府]

写真集『ある日』(プレイスM/月曜社、2006年)、『BESLAN』(新風舍、同)、そして東日本大震災直後に被災地を撮影した「hope/TOHOKU」(『アフターマス 震災後の写真』(NTT出版、2011年所収)。菱田雄介の仕事を見ていると、周到な準備の積み重ねと、コンセプトをかたちにしていくときの果敢な行動力にいつも驚かされる。今回大阪・十三のBloom Galleryで初めてて発表された「「border/McD」シリーズも、撮影を開始したのは1993年というから、かなり時間をかけたプロジェクトだ。
たしかに世界のいろいろな国を旅していると、赤に黄色のMのマークがくっきり浮かび上がる看板のロゴがいやおうなしに眼に入ってくる。現代社会におけるグローバリズムの象徴とも言うべきマクドナルドのハンバーガーショップは、たしかに面白い被写体だ。同じシステム、同じメニューとはいえ、国ごとの経済や文化の差異によって、そのたたずまいも微妙に違ってくる。北朝鮮やイランのように、「アメリカ文化の権化」とみなされて、マクドナルド自体が存在を許されない国もある。菱田のもくろみは、中東、東欧諸国から震災直後に宮城県で撮影したハンバーガーショップまでを比較対照させることで、世界を区切っている、見えない「border」を浮かび上がらせることにある。現在はまだ30カ国余りということだが、もう少し数が増えてくると、さまざまな様相がせめぎあう場所としてのマクドナルド空間のもつ意味が、よりくっきりと浮かび上がってくるのではないだろうか。ただ今のスナップショット的な撮り方だと、自ずと限界もあるようにも感じた。抽出する要素を絞り込み、画面を大きくして、より強度のある写真として提示した方がいいのではないかと思う。

2012/01/29(日)(飯沢耕太郎)

New Creators Competition2012 展覧会企画公募 EXHIBITIONS

会期:2012/01/16~2012/02/18

静岡クリエーター支援センター 2Fギャラリー・3F[静岡県]

企画公募の審査を担当した静岡CCCの展覧会を見る。高野友美は雨を素材に用いて作品をつくり、音と映像によるインスタレーションを行なう。建築家の谷川寛は、計ることをテーマに、教室にさまざまなタイプの装置をおく。とりわけ川の分岐点をフィールドワークしたプロジェクトは労作である。そしてオフ・ニブロールの高橋啓祐は、暗闇の中で緊張感のある音と映像が絡む、小さな家型/巣箱が並ぶ空間を出現させていた。多くを語らないが、震災を含めて、多くのことを想像させる。新人とは言えないので、充分に巧い作品になるとは思っていたが、それ以上に圧倒的なクオリティだった。

写真=高橋啓祐《ウラヤマの鳥》

2012/01/30(月)(五十嵐太郎)

現代美術展 in とよはし

会期:2012/01/17~2012/02/19

豊橋駅南口駅前広場、名豊ギャラリー、名豊ビル5階イベントホール、ギャラリー48、豊橋市公会堂前広場、豊橋公園、豊橋市美術博物館、愛知大学大学記念館、豊橋丸栄9階イベントスペース、こども未来館[愛知県]

続いて豊橋に移動し、「現代美術展 in とよはし」を見る。駅前や百貨店から公園、美術館、大学まで、街なかの各地にアートを展開していた。正直、微妙な作品も混ざっており、ばらつきがないわけではない。もっとも、公園の石を一列に並べ変えた味岡新太郎、図鑑の絵を切り抜く渡辺英司、音の出る木の彫刻でワンフロアをうめつくした石川理、不思議な学習日記×アメコミヒーローの杉山健司&浅田泰子など、バリーションに富む作品は、豊橋の街歩きとともに楽しめた。

写真=味岡新太郎(中)、渡辺英司(下)

2012/01/30(月)(五十嵐太郎)

行きつ戻りつ つくり つくられること

会期:2012/01/12~2012/02/12

ナディッフギャラリー[東京都]

佐野陽一、久村卓、山極満博の3人展。だが、ギャラリーの壁には佐野の写真が10点かかっているだけなので、不注意な人は佐野の個展と勘違いするかもしれない。が、ギャラリーの入口の螺旋階段の下に目をやれば、そこには小さな小さなプチギャラリーが店を開いているし(山極)、奥の倉庫をのぞけば密かにビデオショーをやってるし(久村)、床にゴミがたまってるのかと思ったら硫黄岳の土だったりして(久村)、あっちこっちに作品があることに気づく。階上の本屋にも、作品運搬用の箱の内部をプチギャラリーに見立てたり(山極)、在庫本用の引き出しの内部がプチアトリエになってたり(山極)、台の上に石みたいな石鹸(石鹸みたいな石かも)を置いたり(久村)、数カ所に作品が隠されている。サービス精神旺盛な楽しい展覧会。

2012/01/31(火)(村田真)

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