artscapeレビュー
2012年02月15日号のレビュー/プレビュー
北野謙 展 our face project:Asia
会期:2011/11/26~2012/01/29
MEM[東京都]
目に焦点を合わせて周囲がぼやけた肖像写真、のように見えるが、じつは数十人分の肖像写真のネガを1枚ずつ目の位置を合わせて焼き付けていった、いわば集団肖像写真なのだ。今回は、東京の反戦デモに参加した若者たち、滋賀県の高校の野球部員、ガンジス川で沐浴するヒンドゥー教徒、バリ舞踊のダンサー、天安門広場を警備する兵士たちなど、アジア各地で撮ったさまざまな集団の「群像」を展示している。このまま拡大していって、たとえばインド人全員の顔とか、全世界の政治家の顔とか、全人類の顔とか焼き付けたら、はたしてどんな顔になるんだろう。それはムリでも、たとえば卒業写真などクラス全員この方式で撮れば、だれがブスだったとかだれがデブだとかいわれなくなるし、差別もなくなるはずだ。なわけないか。ところで、ギャラリー内には梱包材が置いてあるし、テーブルの上には荷物が積み上げてあるし、なんか雑然としてるなあと思ったら、展覧会はすでに終わっていたのでした。失礼しました。
2012/01/31(火)(村田真)
中山玲佳「Sleeping diary──楽園へ」
会期:2012/01/21~2012/03/10
昨年VOCA賞を受賞した中山玲佳の個展。鳥や動物、植物などのモチーフは見たことがあったのだが、今展で展示されていた新作には、教会などの建築彫刻や宗教絵画に登場する天使や使者のような人物のモチーフも描かれていた。唐草模様のようにうねりながら画面に広がる鮮やかな色彩と無数の繊細な鉛筆の線、それをいっそうドラマチックに印象づける闇のような黒い色面。圧倒的な迫力も感じる中山ならではの物語性にあふれた作品世界は、さらに神秘性を増して、なおかつ逞しい生命感にも溢れていた。3月には京都市立芸術大学ギャラリー @KUCAで開催される「New Contemporaries」 展(3月3日~25日)にも出品の予定だという。楽しみにしている。
2012/01/31(火)(酒井千穂)
カタログ&ブックス│2012年2月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
深読み! 日本写真の超名作100
artscapeレビューの執筆者でもある、写真批評家・飯沢耕太郎の最新著作。1850年から2011年までの、究極の、絶対に見ておきたい写真101点を収録。彼の手で丁寧に選び取られた「日本写真」の超名作と、それぞれに付された「深読み」が、150年にわたる壮大な写真史の広がりを浮かび上がらせる。
MP1 artist's book Expanded Retina│拡張される網膜
写真を主とした制作活動を行う美術家エグチマサル・藤本涼・横田大輔・吉田和生と、批評家・星野太(表象文化論)によるプロジェクト「MP1」初のアーティストブック。2012年1月21日よりG/P gallery(恵比寿)にて開催された同名の展覧会に合わせての出版された。MP1メンバーと飯沢耕太郎(写真評論家)・後藤繁雄(編集者)・粟田大輔(美術批評)・天野太郎(横浜美術館主席学芸員)との対談、伊藤俊治トークショー等を収録。
地域社会圏主義
高齢者や一人世帯がさらに増えていくすぐそこの未来、私たちは自身の生活とそれを受け止める器である住宅をどのようにイメージし、また獲得していくことができるのか。2010年春に刊行され、話題をよんだ『地域社会圏モデル』から大きく一歩踏み込んで、2015年のリアルな居住像を提案する。上野千鶴子(社会学)、金子勝(経済学)、平山洋介(建築学)との対談も収録。[INAX出版サイトより]
富士幻景──近代日本と富士の病
古来から日本人の崇敬を集めた富士山が、幕末以降の近代化と対外戦争のプロセスの中で国家の山へと変容していく様子を写真や印刷物340点から辿る。IZU PHOTO MUSEUMで2011年に開催された「富士幻景──富士にみる日本人の肖像」展関連書籍。
あなたとわたし わたしとあなた──知的障害者からのメッセージ
みんな、生きているんだ。──東京・恵比寿で約30年間、知的障害者の生活支援を続けている特定非営利活動法人ぱれっと。そこで、働き、くらし、遊ぶ、知的障害者の人たち。それぞれが人として一生懸命生きている姿を、60点を超える写真から感じ取っていただけたら。そして、障害のあるなしではなく、全ての人があたり前に生きていける社会を考えるための写真絵本です。[小学館サイトより]
2012/02/15(水)(artscape編集部)