2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年02月15日号のレビュー/プレビュー

ヤノベケンジ:太陽の子・太郎の子

会期:2011/10/28~2012/02/26

岡本太郎記念館[東京都]

ある意味、ヤノベケンジは変わらないところが強い。サバイバルからリバイバルへ、というモチーフは3.11以降も続く。福島の原発事故を受けて、批判や悪口ばかり言ったり、悲観するのではなく、明るく前向きに、アートで希望を示すべく、記念館の前庭に、すくっとサンチャイルドの像が立つ。興味深いのは、彫像単体ではなく、これを設置するための秘密の神殿のような空間も一緒に構想していること。プログラムはウェディングチャペルだが、古今東西の宗教建築をサンプリングしたようなデザインである。

2012/01/27(金)(五十嵐太郎)

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渡邊佳織 個展「朝のグッドニュース」

会期:2011/12/10~2012/01/12

imura art gallery kyoto[京都府]

じつは個展の会期はとうに過ぎていて、見逃してしまっていたのだが、ギャラリーの前を通りがかったら作品が展示されていてラッキーだった。京都嵯峨芸術大学の修士課程(芸術研究科)を修了し、制作、発表を続けている渡邊佳織は1984年生まれの若いアーティスト。絹本に着彩という日本画の手法で描かれるその作品の多くには、子どもが登場するのだという。描かれた少女たちの無邪気な表情や、その動作の描写が見入ってしまうほど細やかで、透明感をたたえた色彩も美しい絵だった。しかし、同時にその世界観には不安感がつきまとう。展示されていた作品のなかでも「子どもの旅」をテーマにした大作《輝々麒麟》や、《朝のグッドニュース》などは特に、希望や期待感を誘うタイトルやテーマの印象とは裏腹に、不穏な空の色、なんとも険しい少女の表情が強烈で、会場を後にしても気持ちが引き摺られた。テクニック、作品のイメージともに気になる作家だ。3月にかけて再び個展が開催されるという(イムラアートギャラリー東京、2012年2月10日~3月3日)。ぜひもう一度見に行きたい。

2012/01/28(土)(酒井千穂)

花岡伸宏 個展 “入念な押し出し”

会期:2012/01/17~2012/01/29

ギャラリー恵風[京都府]

見る側の判断や理解という認識、そこから物語の想像におよぶまでの思考を混乱させるような、脈絡のないイメージを組み合わせた作品を発表している花岡伸宏の個展。今展には丸めたカーペットの穴に差し込まれたビデオカメラが突っ張り棒で押し出されるという工程がそのまま流れる映像のほか、木彫りの彫像と組み合わせた角材から、トコロテンのように桜えびを混ぜた樹脂が押し出されているイメージの立体などが展示されていた。同ギャラリーで2010年に開催された個展「ピンセットの刺さった円柱の飯は木彫りの台を貫通する」でも、意味不明のタイトルをそのまま表わすような作品を発表していたが、花岡の立体作品は、こちらの常識や既成概念、記憶のイメージをスパッと断ち切りながら、どれにも可笑しさや不気味さがあってついつい苦笑してしまう。これはモチーフ同士のイメージのギャップや組み合わせから別の物語性が喚起されるということもあるだろうが、それ以上に彼の卓抜した造形力あってのものなのだと今展で改めて感じた。花岡の作品の格式的で堅実な彫像はそれだけでも美しく、それでいて反抗的で滑稽だ。

2012/01/28(土)(酒井千穂)

古川松平 展

会期:2012/01/23~2012/01/28

Oギャラリーeyes[大阪府]

作家が高校時代を過ごした学校の校舎、教室や自転車の駐輪場などをモチーフに描いた作品が展示されていた。これらは今展までに実際に学校まで取材に出向いたり、過去の写真を元にして描かれているという。ただ単純にセンチメンタルでノスタルジックなイメージというものではなく、むしろどこか映画のような近未来的な光景を想起させるのは、描かれた風景のなかに唐突に、底なしのブラックボックスのような箱型のモチーフが登場していたり、まぶしい光、パースがおかしい構造物など、歪なイメージが表わされているせいだろうか。時の経過とともに新たなイメージをともなって少しずつ上書きされていくような記憶、風景の思い出という作家自身の感情体験を再構築した絵画。作風の印象は以前のそれとは異なれど、プライベートな過去の記憶や時間にアプローチするという点や、憧憬という言葉が浮かぶような密やかな幸福感や期待感がともなっているのは以前の作品にも通じている。今後も楽しみにしている。

2012/01/28(土)(酒井千穂)

パパ・タラフマラ「SHIP IN A VIEW」

会期:2012/01/27~2012/01/29

THEATRE1010[東京都]

北千住にて、パパ・タラフマラの公演「SHIP IN A VIEW」を見る。駅前では、解散するということで、解散反対のポスターを持った人もいた。ほとんど予備知識がないまま鑑賞を始めたのだが、意味のわかる言葉を初めて聞くのは、開演しておよそ30分後である。かといって、海辺の街で具体的な物語がドライブするわけではなく、激しい身体運動と前衛音楽による、適度な抽象表現が観衆の記憶を刺激し、引喩の場を生む。集団による、異なる時間が同時存在するようなポリフォニー的なコレオグラフィーも迫力があった。最初から最後まで、一瞬も緊張が途切れることがない舞台である。解散ということで刊行された『ロング・グッドバイ』(青弓社)を読むと、その背景のひとつとして、日本における芸術活動支援の推移と問題にも触れられており、興味深い。また改めてアートとのコラボレーションが多いことがわかる。ヤノベケンジ、会田誠、インゴ・ギュンターなど。なるほど、以前、彼らのにぎやかな「パンク・ドンキホーテ」を見たときは、舞台美術がトラフだった。家型がどんどん崩れ、解体し、パズルのように変形し、最後は妻面も逆さになるという舞台である。

2012/01/28(土)(五十嵐太郎)

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