2021年10月15日号
次回11月1日更新予定

artscapeレビュー

2013年12月15日号のレビュー/プレビュー

浅井真理子「聞こえない声は、空に溶け拡散する」

会期:2013/11/01~2013/11/02

さくらワークス〈関内〉[神奈川県]

関内外オープン!」に合わせた2日間だけの個展。作品は映像とライブドローイングで、映像は粘性の強い液体がドロドロと流れるもので、なにかと思えば手の平からこぼれ落ちるハチミツをアップで撮っているそうだ。ライブドローイングのほうは、ガラス窓越しに見える外の風景を直接ガラス窓になぞっていくというもの。風にざわめく木の葉まで写し取り、終われば消される徒労にも似た行為だ。映像とドローイングとのつながりはよくわからないけど、どちらもきわめて触覚的。

2013/11/01(金)(村田真)

インベカヲリ★「やっぱ月帰るわ、私。」

会期:2013/10/29~2013/11/04

新宿ニコンサロン[東京都]

インベカヲリ★が、前回新宿ニコンサロンで個展を開催したのは2007年だった。その展示はよく覚えている。弾の飛び交う現代社会の戦場の最前線で、体を張って撮影を続ける女性写真家がまた登場してきたという印象を強く抱かせる、鮮烈なデビューだった。
それから6年あまり、インベは撮影を続け、今回の個展と赤々舎からの同名の写真集の出版にこぎつけた。モデルはすべて女性たち、彼女たちのうちに潜む衝動を全身全霊で受けとめ、共同作業のようなやり方でそのパフォーマンスを記録していくやり方に変わりはない。ただ作品化のプロセスが、より批評的でロジカルに突き詰められてきている。彼女たちの「怒り」の表出が、単純な感情表現に留まることなく、確実に政治的なメッセージとして提示されているのだ。「暮らしに安心」「社会を明るくしよう月間」「支え合う日本」といった空々しい標語、「グラドル自殺」といった新聞記事、セーラー服や下着といった男性によって消費されていく性的な表象──それらが捨て身のエロス的なパフォーマンスと合体して次々に開陳されていく様は、圧巻としか言いようがない。インベは写真集の後記にあたる文章で、なぜ女性を撮影するのかという問いかけに自ら答えてこう書いている。
「男性の場合は、被写体となることに明確な理由をもち、完成された姿を見せたがる。逆に女性はもっと柔軟で、自分を客観視したい、違う角度から見たい、何か自己主張したいときなどにカメラの前に立つ感性をもっている」
これは本当だと思う。いまや、女性の方が自己を冷静に客観視してカメラの前に立つ勇気を持ちあわせているわけで、インベのような表現のあり方は、これから先にもさらに勢いを増してくるのではないだろうか。
なお同展は2014年3月13日~19日に大阪ニコンサロンに巡回する。また、2013年11月20日~12月1日には、同名の展覧会(展示作品は別ヴァージョン)が東京・都立大学のTHERME GALLERYで開催された。

2013/11/02(土)(飯沢耕太郎)

港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2013

会期:2013/10/01~2013/12/01

メリケンパーク・神戸エリア、兵庫県立美術館・ミュージアムロードエリア、三宮・元町エリア[兵庫県]

神戸ビエンナーレをまわる。大森ディレクターが述べていたように、脱「現代美術」が特徴と言えるので、あいちトリエンナーレとは全然違う。アート・イン・コンテナ以外にも、創作玩具国際展、書道展、いけばな未来展、コミックイラスト展、しつらいアート展、グリーン・アート展などを同時に平行して展開するからだ。BBプラザでは、現代陶芸展と地元作家展を行なう。前回は震災の影響で、コンテナを使わず、屋内で開催していたが、今回はいつものように、屋外でコンテナを使っており、統一感が出る。内容は多様でも、コンテナという強力な同一の形式が大量に繰り返されるからだ。今回、元町高架下はペインティングアート展になり、巨大な絵画が並ぶ。建築家では、石上純也事務所出身の萬代基介がメリケンパークに多数の椅子を配置しており、それを見るのも目的だった。安蔵隆朝のメディア・アートが大賞は納得できる。神戸ビエンナーレのチケットで、遊覧船(海から見る作品がある)に乗れたり、会場をつなぐ特別のシャトルバスを使えるのは嬉しい。あいちトリエンナーレでは、地元の交通機関との協力やレンタサイクルなど試みたが、前回、今回ともに実現できなかった。
ガイドブックでも近代建築を紹介しているが、神戸の町にはまだまだポテンシャルがある。いろいろな建築があるが、KIITOの大空間を使うと、すごくカッコいいアートの展示ができるだろう。一方、神戸ビエンナーレは脱「現代美術」の方向性なので、今後どこまで広げるか、あるいはどこかで止めるか、にも興味がある。
写真(上から):コンテナアート、安蔵隆朝《Light flower of Two faces》、高架下のアート、萬代基介《都市のリビングルーム》」

2013/11/03(日)(五十嵐太郎)

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神戸ビエンナーレ2013「横尾忠則 感応する風景」展/横尾忠則 肖像図鑑

兵庫県立美術館(2013/10/01~12/01)/横尾忠則現代美術館(2013/09/28~2014/01/05)[兵庫県]

前回の神戸ビエンナーレでは、兵庫県立美術館が同時期に開催した榎忠展が圧倒的なインパクトだった。今回はここと、新設された横尾忠則現代美術館が、同時に横尾展を行なう。前者は風景画、後者は人物画をテーマとする。Y字路シリーズは、時空間がねじれた感じで、建築畑には興味深い。また兵庫県立美術館の「2013年度コレクション展2」は地味だし、公式ガイドブックでも触れられていないが、関西のアート界を45年間支えた大阪の信濃橋画廊に焦点をあてた好企画である。地域の歴史を振り返り、ギャラリーの変遷と大きさもわかるようにしており、素晴らしい。

2013/11/03(日)(五十嵐太郎)

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新具象彫刻展を出発点とした東京造形大学の出身者たち

会期:2013/11/04~2013/12/07

東京造形大学付属美術館[東京都]

ベタなタイトルだが、この「新具象彫刻展」というのは1976-85年の10年間、都美術館に集結した具象彫刻を目指す美大生たちのグループ展のこと。同展では、そのうち造形大出身者による作品を、「新具象彫刻展」出品作と、それ以降の作品、近作の3段階に分けて展示している。出品は中ハシ克シゲ、舟越桂、三木俊治、山崎豊三ら7人で、世代的には1945-55年生まれになる。みな出発点(つまり「新具象彫刻展」出品作品)は似たような具象だが、徐々に大きく姿を変えていくプロセスがうかがえて興味深い。とくに中ハシ克シゲの初期の鉄の具象からポップを経て、近年の戦闘機のフォト彫刻へと展開していく変貌ぶりは見ていて気分がいい。それに比べりゃ舟越桂などはあまり変化がないほうだ。こうして時間軸に沿って見ていくと、具象彫刻も捨てたもんではないなーと思う。ところで、屋外に1点、立方体のゲージに囲われたゴミの固まりが置かれていた。これは、原爆症で逝った殿敷侃が日本海に流れ着いた漂着ゴミを焼いて固めたものを、4半世紀後に三木俊治が発見し、福島原発の建屋を模したゲージに納めて作品に仕上げたものだそうだ。これは具象彫刻というより具体彫刻だ。

2013/11/04(月)(村田真)

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2013年12月15日号の
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