2021年10月15日号
次回11月1日更新予定

artscapeレビュー

2013年12月15日号のレビュー/プレビュー

想像ラジオ

発行日:2013/03/02(土)

いとうせいこうの小説『想像ラジオ』は、聴くことの物語である。震災後、生き残ったものを取材したドキュメントやノンフィクションは今後も膨大につむがれるであろう。だが、亡くなったものたちのもう語ることができない声を聴くことは、文学やアートにこそ可能だ。『想像ラジオ』は音楽的であり、音楽の力も使い、読者を受信機に変える。

2013/11/13(水)(五十嵐太郎)

田代一倫「はまゆりの頃に 2013年春」

会期:2013/11/06~2013/11/24

photographers’ gallery/ KULA PHOTO GALLERY[東京都]

2011年4月から続けられていた田代一倫の「はまゆりの頃に」の東北行脚は、今回の展示で一区切りということになりそうだ。この欄でも何度か言及したように、被災地を含む東北各地でたまたま出会った人たちに声をかけ、正面向きのポートレートを撮影するという、ある意味「愚直な」やり方を貫くことで、あまり類を見ない独特の肌合いを持つ作品が成立してきた。撮影人数はのべ1200人にのぼるそうだが、そのことだけでも気の遠くなるようなエネルギーが費やされている。にもかかわらず、写真から発する気分はとても穏やかで柔らかいものだ。これはやはり、撮り手の田代の人柄が反映しているということだろう。本作が2013年度のさがみはら写真新人奨励賞を受賞したのも当然と言える。
なお、今回の展示にあわせて写真集『はまゆりの頃に 三陸、福島2011~2013年』(里山社)が刊行された。全488ページ、掲載写真453点。社員ひとりだけという小さな出版社が「ずっと残したい本だけを出版する」ことを目指して設立され、本書がその最初の出版物になる。ずっと田代の展示を見続けてきた観客のひとりとして、このようなクオリティの高い写真集に仕上がったことを心から祝福したい。
あらためてページを繰ってみて、このシリーズが、写真だけでなくその下に添えられた言葉(キャプション)によっても支えられていたことがよくわかった。
「『自宅の2階に、津波で流された方の遺体が挟まっていました』
被災した方と会話し、撮影したのは、この方が初めてでした。瓦礫を前にして私はどこかテレビ映像のように感じていましたが、彼女のこの言葉で、目の前の風景が突然、現実となって押し寄せて来ました。」
写真集の最初の写真に付されたキャプションである。ここにも写真と同様に、身の丈にあった言葉を手探りで、誠実に掴みとり、記していこうという「愚直な」姿勢がしっかりと貫かれている。

2013/11/15(金)(飯沢耕太郎)

陶器二三雄《文京区立森鴎外記念館》

[東京都]

竣工:2012年

陶器二三雄が設計した文京区の森鴎外記念館を訪れる。時間の変化に耐える大人の建築というのは、こういうものだろう。敷地には森鴎外が居をかまえる前からの銀杏の木を残し、時間を意識するのもうなずける。サンダーをかけたレンガの質感、わずかな傾斜で生まれる空間の動き、そして街並みのような雰囲気が心地よい。

2013/11/15(金)(五十嵐太郎)

ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展

会期:2013/11/09~2013/12/23

名古屋市美術館[愛知県]

名古屋へ。「生きる喜び」(オノ・ヨーコの作品)がなくなったまち。だが、伏見地下街と出入口には、打開連合設計事務所による長者町ブループリントは変わらず、残っている。そして名古屋市美のハイレッドセンター展では、青木淳+杉戸洋のリノベーションを一部残した会場構成だった。リノベーションのリノベーションであり、また面白い効果を生む。事件の記録のようなキャプションと展示が興味深い。ほとんどのプロジェクトを知っていたが、当時の資料でこれだけまとめて見たことはない。当時、1,000円札模型の報道に関して、赤瀬川源平は新聞社に抗議していた。自由で、時代のエネルギーが伝わる。

2013/11/15(金)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00023906.json s 10094349

ターナー展

会期:2013/10/08~2013/12/18

東京都美術館[東京都]

2度目の訪問。これだけの作品が来てるんだから何度でも行きたい。今回の発見は、多くの画面に太陽が描かれていること。なにをいまさらというなかれ、太陽はモネやゴッホの絵にも登場するけど、こんなに頻繁に描いた画家はほかにいないはず。太陽が描かれているということは、画面が全体に明るいと同時に、視界が逆光になるので陰影が多いということでもある。つまり光とともに闇も際立つのだ。ターナーの画面のまぶしさや明暗の極端な対比は、どうやらこの逆光に由来する。そう考えると、まぶたを切り取られて太陽光を直視しなければならなくなったレグルスの神話が、ターナーの画家としての生きざまと重なってくるではないか。

2013/11/15(金)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00023344.json s 10094706

2013年12月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ