2021年09月15日号
次回10月1日更新予定

artscapeレビュー

2013年12月15日号のレビュー/プレビュー

ブルース・デビッドソン

会期:2013/11/19~2013/12/21

YUKA TSURUNO GALLERY[東京都]

ブルース・デビッドソンと言えば、われわれの世代には、1966年にアメリカニューヨーク州ロチェスターのジョージ・イーストマンハウス国際写真美術館で開催された「コンテンポラリー・フォトグラファーズ──社会的風景に向かって(Contemporary Photographers─Toward a Social Landscape)
」展の出品作家のひとりという印象が強い。だが、いわゆる「コンポラ写真」の起点となったこの展覧会において、デビッドソンはリー・フリードランダー、ゲイリー・ウィノグランド、ダニー・ライアン、ドウェイン・マイケルズといった他の写真家たちとは異なるポジションに立っていた。彼は『ライフ』のスタッフカメラマンを経て、1959年にはマグナム・フォトスの正会員に選出されており、正統的なフォト・ジャーナリズムを背景として活動していたからだ。
だが、今回YUKA TSURUNO GALLERYで開催された、おそらく日本では初めてと思われるデビッドソンの作品の回顧的な展示を見ると、彼がたとえばロバート・キャパ、W・ユージン・スミスのようなフォト・ジャーナリズムの本流の写真家たちとは完全に一線を画していたことがわかる。1950年代の「ブルックリン・ギャング」も、60年代の「東100番街(East 100th Street)」も個人的な動機によって、集団の「内側から」撮影されたシリーズであり、むしろロバート・フランクやラリー・クラークの写真に近い肌触りなのだ。とはいえ彼の写真には、それらのテーマをアメリカ社会の歴史を常に参照しながら撮り進めていく客観性もたしかに備わっていた。公共性と私性との絶妙なバランスが、デビッドソンの仕事にどっしりとした安定感を与えていることが、今回の個展でよくわかった。ただ残念なことに、16点の展示では彼の作品世界を概観するには無理がある。ジョゼフ・クーデルカ展と同規模の回顧展を、ぜひ実現してほしい写真家のひとりだ。

2013/11/21(木)(飯沢耕太郎)

ユートピアを求めて ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム

会期:2013/10/26~2013/01/26

神奈川県立近代美術館 葉山[神奈川県]

ファッション・ブランド、BA-TSUのデザイナーの松本瑠樹が蒐集した、1917年のロシア革命から、ソヴィエト連邦が形をとる1930年代に至るポスターよる展覧会である。全体は「I.帝政ロシアの黄昏から十月革命まで」「II.ネップ(新経済政策)とロシア・アヴァンギャルドの映画ポスター」「III.第一次五カ年計画と政治ポスター」の3部に分かれ、約180点の大判ポスターが展示されている。
ワシーリー・カンディンスキー、カジミール・マレーヴィチ、ウラジーミル・マヤコフスキー、アレクサンドル・ロトチェンコなど、綺羅星のように並ぶロシア・アヴァンギャルドの巨人たちの作品は見応えがあるが、なんといっても圧巻なのは「II.ネップ(新経済政策)とロシア・アヴァンギャルドの映画ポスター」のパートに展示されたウラジーミルとゲオールギーのステンベルク兄弟の映画ポスター群だろう。この時期、ソヴィエト政府は大衆宣伝・娯楽としての映画上映に力を入れ、国内で製作された映画だけでなくアメリカ、ヨーロッパの映画も積極的に公開していた。ステンベルク兄弟は、ロシアの民衆芸術に起源を持つ、原色を駆使した独特の色彩感覚と、モンタージュや構成主義的な画面構成のようなアヴァンギャルドの手法を融合させ、生命力あふれる力強い映画ポスターを次々に発表していった。さらに1930年代以降のグスタフ・クルーツィスらの政治ポスターになると、写真を使用する比重がより大きくなり、フォト・モンタージュの可能性が極限近くまで追求されることになる。美と政治との軋轢のなかから花開いていったソヴィエト連邦のグラフィック・デザインと写真を、もう一度新鮮な眼で見直すいい機会となる展示だった。

2013/11/23(土)(飯沢耕太郎)

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黄金町バザール2013

会期:2013/09/14~2013/11/24

京急線「日ノ出駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ、既存の店舗、屋外他[神奈川県]

黄金町バザール2013へ。建築では、宮晶子による京浜急行電鉄黄金町高架下新スタジオ Site-B、ワークステーションによるSite-C 工房などを見学した。いずれも高架下という面白い敷地をデザインの与件にうまく組み込んでいる。インテリアでは、吉村靖孝のレッドライト・ヨコハマもようやく見ることができた。黄金町のあちこちに現代アートが展開していたが、特に鎌田友介の家に絡んでいく建具インスタレーションがよかった。
写真(上から):鎌田友介《D.frame.window》、吉村靖孝《レッドライト・ヨコハマ》、宮晶子《黄金町高架下新スタジオ Site-B》

2013/11/24(日)(五十嵐太郎)

フェスティバル/トーキョー13 F/T13イェリネク連続上演 光のない。(プロローグ?)

会期:2013/11/21~2013/11/24

東京芸術劇場シアターイースト[東京都]

F/T13の小沢剛が演出した「光のない。(プロローグ?)」は、展覧会、インスタレーション、映像、音楽、演劇などのジャンル分けが揺らぐ体験だった。テキストがさまざまな媒体に刻まれ、ついに言葉を介しない奴が現われる。有名なSF映画も想起させながら。追い立てられる羊のように観客は動き、劇場がいつもと違う場に変容していた。

2013/11/24(日)(五十嵐太郎)

Delta「可能性の手触り」

会期:2013/11/22~2013/11/26

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

東京藝大先端芸術表現科の3年生29人の後期成果展。絵を描くやつもいれば、映画を撮るやつもいる。みんないろんなことやってるんだけど、決定的につまらない作品はなく、みんなそこそこのレベルを保っている。そんななかでもっともハラハラ時計だったのが、濱口京子の《デリバリー・サービス》。会場の入口近くに宅配の箱が積み上がっているのだが、近寄ると内部から音が聞こえてくる。発信装置を仕掛けた箱を毎日ここまで宅配業者に運んでもらってるそうだ。自分の作品を流通にのせるのではなく、流通にのせることを作品にしたもの。中から音が聞こえてくるのは不穏だ。

2013/11/24(日)(村田真)

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