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2014年08月15日号のレビュー/プレビュー

開館15周年ボストン美術館ミレー展 バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から

会期:2014/04/19~2014/08/31

名古屋ボストン美術館[愛知県]

名古屋ボストン美術館のミレー展へ。田園風景を描いた彼と、バルビゾン派の画家たちをまとめて紹介する内容だった。もっとも有名な絵画の《種まく人》は、他と比べても、躍動感をひねりとゆがみで強調して表現した特殊な作品である。一般に農民の作業を描いたミレーの屋外の絵は有名だが、室内での編み物のお稽古を題材にした作品もあり、17世紀オランダの絵画のときの構図と変わらず、左側に窓を置く。

2014/07/23(水)(五十嵐太郎)

《メソニックビル》

[東京都]

東京に移動し、神谷町の《メソニックビル》(1980)を見学する。東京タワーのほか、アントニン・レーモンドの教会や《ノアビル》などの近くで、外観はガラス張りのモダン建築だが、内部の地下には、フリーメーソンの青いブルー・ロッジと黄色のスコティッシュ・ライト・ホールなど、大工道具を基調とした象徴的なシンボルに彩られた空間がある。筆者は卒論のとき、18世紀フランスのアンビルドの建築家ジャン・ジャック・ルクーを題材とし、フリーメーソンと建築の関係に少し触れたので、懐かしい雰囲気だ。


ブルー・ロッジ


スコティッシュ・ライト・ホール

2014/07/23(水)(五十嵐太郎)

《はじまりの美術館》

[福島県]

猪苗代湖に向かい、《はじまりの美術館》を見学した。築120年の古い蔵をリノベーションし、アール・ブリュットの美術館に変えたものだが、美術に閉じることなく、今後は周囲の住民を巻き込む活動を展開するという。オープニング展は、専門的な美術教育を受けていない作家と、いわゆる現代美術家と等しく組み合わせている。建物の設計は竹原義二であり、蔵の中に小さな蔵をつくるような展示室群だ。また縦横の両軸とも、端から端まで、建物を貫通し、向こうの風景まで見える視線の抜けが抜群だ。それにしても、蔵は全長33mもあり、もとの梁のあまりの太さに度肝を抜かれた。



《はじまりの美術館》内部

2014/07/25(金)(五十嵐太郎)

第40回大原美術館美術講座 1960年以後の芸術・建築

会期:2014/07/26~2014/07/27

倉敷アイビースクエア オパールホール[岡山県]

倉敷アイビースクエアに向かい、大原美術館の美術講座「1960年以後の芸術・建築ー万博、モノ派、21世紀へのビッグバン」に出席した。毎年恒例のシリーズであり、地元で楽しみにしているファンが多いことが印象に残る。高階秀爾が大原のコレクションをもとに20世紀の現代美術史、建畠晢が後に大きな影響を与えたパリの「大地の魔術師」展(1989)、李禹煥がもの派、筆者が万博の時代の建築について、それぞれレクチャーを行い、最後に質疑応答を交えて全体討議を行なう。二日間の濃いプログラムだった。

2014/07/26(土)(五十嵐太郎)

倉敷市街、大原美術館、《有隣荘》、《林源十郎商店》、いがらしゆみこ美術館

[岡山県]

倉敷は実に10年ぶりの訪問であり、前回に訪れたチボリ公園は閉鎖され、跡地にショッピングモールやアウトレットパークの商業施設が出現した。これはとても今風の変化である。一方、美観地区はさらに江戸後期風のデザインが増え、テーマパーク化が進む。より本物に近いテーマパークが求められたということか。また大原美術館の展示コレクションを久しぶりに見学し、エル・グレコやジャクソン・ポロックなど、早い時期によくこれだけ集めたものだと感心させられた。また最近は日本の現代美術を、レジデンスプログラムや《有隣荘》の期間限定展示などを通じて積極的にとりあげる。大原美術館の向かいにある《有隣荘》(1928)を見学したが、大胆な和洋中の折衷というか、併置のデザインが印象的だった。ともあれ、倉敷の街並みは歩いて楽しい空間になっており、コスプレ好きの人も来るという。《林源十郎商店》は、古建築を再生し、倉敷生活デザインマーケットとして賑わいの場になっていた。いがらしゆみこ美術館も、コスプレ記念撮影の場となっていたが、肝心の展示は倉敷の風景を書き下ろしで描いたシリーズ以外、内容は微妙だった。


大原美術館



有隣荘


林源十郎商店

2014/07/26(土)(五十嵐太郎)

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