artscapeレビュー
2010年04月15日号のレビュー/プレビュー
shibuya1000
会期:2010/03/13~2010/03/22
渋谷駅地下コンコース他[東京都]
今年で二回目を迎える渋谷におけるアーバン・エキスポである。渋谷駅を舞台とし、数多くの作家が渋谷の魅力を伝える展示を行なっていた。「エリアマネジメント」の一環として行なわれたことは特筆すべきであろう。開発ではなく、管理運営による都市づくりのひとつの在り方としても、本イベントは位置づけられよう。多くの展示があったが、わりと時間をかけて見ることのできた、二つの展示にふれておきたい。杉浦久子+suginocoによる「オノマトペB面」は渋谷の地下空間に現われる擬声語を立体化し(「ざわざわ」「チャリーン」等)、垂直方向を誇張した模型として制作して表現したもの。漫画的であるのに三次元化している、ユーモラスなのに何故かシリアスに都市分析をしているなど、アンビヴァレントな表現が面白い。東急文化会館再開発地区の仮囲いを利用したg86の「QR Code Museum」は、点在するQRコードによって新世代クリエーターの作品を紹介するもの。おそらく、訪れるタイミングが悪かったのか、実際に使用する人はなかなか見られなかったが、各QRコードが示すURLにより作品が陳列されているというわけである。このアイディアは、さらに都市の中に展開していくと面白くなるだろうと期待させた。より具体的に都市へ介入している建築家/作家として、mi-ri meterの作品(「MDRIX」や「テントス24」)を思い出したのであるが、実際g86のメンバーもmi-ri meterの手法に影響を受けていたのだという。
URL=http://www.shibuya1000.jp/
2010/03/22(月)(松田達)
みる、つなぐ、ひらく
会期:2010/03/23~2010/04/04
BankARTミニギャラリー[神奈川県]
BankARTスクール飯沢耕太郎ゼミの受講生による写真展。ゼミは「ポートフォリオを作る」というテーマだったので、写真作品だけでなくポートフォリオも出品。写真では高木亜麗の作品が清新、ポートフォリオではなかちゃんの感性が光る。
2010/03/23(火)(村田真)
高橋宗正「スカイフィッシュ」
会期:2010/03/19~2010/04/18
AKAAKA[東京都]
高橋宗正と最初に会ったのは2001年頃、まだ彼は20歳そこそこの写真学校の学生だったはずだ。その頃からセンスのよさはずば抜けていたのだが、逆に器用にまとまってしまいそうな予感もあった。その後、彼は中島弘至とSABAというユニットを組んで、2003年の「写真新世紀」で優秀賞を受賞する。だが、それからしばらくは模索の時期が続いていたようだ。今回、赤々舎から最初の写真集『スカイフィッシュ』が刊行され、同名の展覧会も開催された。しばらくぶりで彼の作品をまとめて見ることができたのだが、明らかに一皮むけて、成長の跡が刻みつけられていた。昨年やはり赤々舎から写真集を出した佐伯慎亮もそうなのだが、公募展などで受賞後、きちんと自分の世界を形にすることができた写真家たちを見ると、嬉しいだけでなくほっとさせられる。そのままどこかに消えてしまう場合も多いからだ。
今回のシリーズには、特にテーマらしきものはない。折りに触れて撮影した写真の集積だが、彼が出会った小さな奇跡のような瞬間が的確に捉えられ、みずみずしく、開放的な気分のあふれる作品に仕上がっている。つねに何かに驚きの目を見張っているような少年らしさが、消えることなく残っているのが彼の眼差しの特徴で、鉱物と液体のあいだくらいの透明感のあるイメージに特に偏愛があるようだ。最初の写真が氷の上に一歩踏み出そうとしている遠景の人物、最後の写真が水の上に立つ彼自身を思わせる若者の後ろ姿──このあたりのまとまりのつけ方もなかなかうまい。「空飛ぶ幻の魚」(スカイフィッシュ)のように世界を軽やかに滑空していく気持ちのよさを保ちつつ、さらに暗い水底の深みまでも視線を伸ばしていってほしいものだ。
2010/03/24(水)(飯沢耕太郎)
マダム・タッソー
会期:2010/03/23~2010/04/04
[ラスベガス]
いきなりラスベガスです。この街にはピラミッドも中世のお城もエッフェル塔もニューヨークの摩天楼もある。もちろん縮小コピーだけど、これがホテルとして機能しているのだから驚く。コピーは建物だけではない。マダム・タッソーの蝋人形館では人間のコピーも100体ほどある。ロンドンのマダム・タッソーと異なるのは、こちらはアメリカの芸能人かスポーツマンばかりということ。つまりノーテンキということですな。
2010/03/25(木)(村田真)
シティセンターのアーティストと建築家
会期:2009/09~2010/04
Bellagio Gallery Of Fine Art[ラスベガス]
しかしラスベガスの建築はコピーばかりではない。最近お目見えしたのが、コンドミニアムや商業施設の入った巨大なシティセンターだ。外見はフランク・ゲーリー、内部はダニエル・リベスキンドみたいなショッピングモール、2棟のビルが寄り添うように傾いてるヘルムート・ヤーン設計のヴィーアタワーなど、イミテーションではないけれどキワモノには違いない建築が建ち並んでいる。そのシティセンターの建築と、内外に配されたアートワークを紹介する展覧会。アートワークはおなじみのオルデンバーグから、ジェニー・ホルツァー、トニー・クラッグ、アントニー・ゴームリー、そして約30年前に弱冠21歳でベトナム戦没者記念碑のコンペを勝ちとったマヤ・リンまで、ドローイングやマケットを並べている。翌日、実物を見に行ったが、金のかけ方が半端ではない。やはりアメリカはすごい。
2010/03/26(金)(村田真)