2021年12月01日号
次回12月15日更新予定

artscapeレビュー

2010年09月15日号のレビュー/プレビュー

東大門デザインプラザ&パーク

[ソウル]

ザハ・ハディドによるソウルの東大門近くの巨大なデザイン施設の開発計画。もともと東大門運動場があった約65,000平米の敷地に、ザハの流線型のデザインが展開する。東大門はファッション産業で知られていたが、近年は中国からの格安衣料品の流入などによって、その不振がつづいていた。そこでデザイン産業との複合によって、活性化が図られたという。現在、一部が完成しており、カフェや屋上庭園などに入ることができる。ところでこのプロジェクトに対し、ザハの過去のアンビルド・プロジェクトを知るものからの否定的な意見も聞いた。いわく、パースペクティブをずらし、歪ませ、鋭角的なラインによって調和を撹乱するデザインをしていたはずの彼女が、ここでは環境やランドスケープと調和した建築をつくっており、過去の挑発的だったデザインが見られないのが残念だと。確かに、少なくとも鋭角的なラインではなく、流線的なラインが全体に貫かれているし、知覚に不快を与えるようなデザインではない。とはいえ、筆者は実際に見学をして、その種のコンセプトとデザインの不一致といった疑問は特に感じなかった。まず何よりスケールが巨大であり、同じ戦略とコンセプトで建築をつくれるような状況ではないだろう。また流線型が持つ少しずつ風景が変化していくかのような効果は、むしろこれくらいの巨大なスケールにおいてうまく機能しているようにも感じられた。

2010/08/05(木)(松田達)

Kring

[ソウル]

チャン・ユンギュを中心とした韓国の建築設計グループ韻生同による複合文化施設。弾丸によって衝撃が与えられたかのような、同心円状の刳形と開口部が金属パネルによって表現されており、非常にインパクトのあるファサードが生み出されている。内部に入るとファサードの裏側数メートルの部分が大きな吹き抜けとなっており、円形の開口部の奥には円筒状の通路や居室が配置されているなど、立体的な空間構成が生み出されており、さらに上部には円筒形や円形をモチーフとした屋上庭園が、やはり立体的に構成されている。奥の空間のインテリアも実によくデザインされており、透明感のある空間をつくりだしていたが、筆者は特にこの厚みのある吹き抜け空間の体験が印象的だった。チャン・ユンギュは「浮遊」や「無重力」といった概念を以前から建築のテーマとしているらしく、この吹き抜け空間にはそのような方向性がとてもよく現われていると感じた。

2010/08/05(木)(松田達)

ガーリー2010展

会期:2010/07/27~2010/08/10

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

少女というよりギャルを描いた絵、人形、写真、映像など、おたく好みの作品が並ぶ。竹久夢二の落書き、草間彌生のオブジェ、戸川純のライブ映像(いま見てもやっぱり変)といったオマケつき。川崎市も目配りが早いと思ったら、やってるのは銀座芸術研究所だった。せっかくの企画、なんでアクセスの悪い市民ミュージアムでやるのかね。

2010/08/05(木)(村田真)

新世代への視点2010

会期:2010/07/26~2010/08/07

なびす画廊+藍画廊+ギャラリー58+ギャルリーSOL+ギャラリーなつか+コバヤシ画廊+ギャラリー現+ギャラリーQ+ギャラリイK+ギャルリー東京ユマニテ+gallery 21 yo-j[東京都]

毎年夏恒例の同時多発企画展。昨年の参加画廊は12軒だったが、今年は11軒。差し引き1軒が永遠に抜けてしまった事実は重い。今年の出品作家11人のうち7人が女性。黒く塗り込めた背景から人物や建物を輝くように浮かび上がらせる田中千智の絵(ギャラリー現)、新聞紙の広告ページなどを巧みに使ってポップな群像をつくりあげる富田菜摘の彫刻(ギャルリー東京ユマニテ)、障子を屏風状に仕立て「蟹鮨」の店やテニスコートばかりを描く羽毛田信一郎の水墨(ギャラリイK)が印象に残った。なにかこだわりとか偏りの強さが作品の強度を保証しているように思える。もちろんそれを説得力のある表現に高めるだけの手技が必要なことはいうまでもないけど。

2010/08/06(金)(村田真)

山本太郎 古典─the classics─ Tales

会期:2010/07/02~2010/08/12

第一生命南ギャラリー[東京都]

日本画に現代的モチーフを忍ばせた「ニッポン画」を標榜する山本の個展。今回は「卒都婆小町」「桜川」「隅田川」といった古典文学に基づく主題に、点字ブロックや青いビニールシートみたいなポップでチープなアイテムを組み合わせている。《形態不時屏風》は富士山の前に工場の煙突が立つ風景もさることながら、横長の屏風そのものが折りたたみ式携帯を模した作品。これはおもしろい。しかし今回の白眉ともいうべき幅16メートル近い超横長大作《白線散華図》は、壁面を埋めるにはいいかもしれないが、作品としてはあまり感心しなかった。

2010/08/06(金)(村田真)

2010年09月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ