2021年12月01日号
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artscapeレビュー

2010年09月15日号のレビュー/プレビュー

束芋「ててて」

会期:2010/08/05~2010/09/11

ギャラリー小柳[東京都]

いまもっとも勢いのあるアーティストの個展。朝日新聞の連載小説のために描いた挿絵をまとめたアーティストブック『惡人』の出版記念、および来年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表決定記念でもある。手のドローイングに本物の毛髪を組み合わせた《ててて》をはじめ、シンガポールで制作した手漉き和紙を使ったシリーズ、映像インスタレーション《ギニョラマ》、それにオブジェ本ともいうべき『惡人』特装版と盛りだくさんの出品。盛りだくさんすぎて焦点がボケてしまいそうだが、毛髪を使ったドローイングは不気味でいいなあ。

2010/08/06(金)(村田真)

石黒昭「ISHIGURO-YA」

会期:2010/07/23~2010/08/07

nca[東京都]

19世紀の耽美なアカデミズム絵画に、現代のイコン(アイコン)ともいうべき少女キャラクターをすべりこませた絵。というと、ありがちな名画のパロディに思われるかもしれないが、しかし作者の関心は画像だけでなく、装飾過剰な金の額縁や手づくりのワインレッドの壁紙、いわれなければ気づかないフェイクの柱まで含めた展示空間全体にあるのだ。聞けば美大出ではなく、壁面装飾で生計を立てているという。妙な可能性を感じさせるアーティストだ。

2010/08/06(金)(村田真)

オノデラユキ「写真の迷宮へ Part2. ─プライベートルーム─」

会期:2010/07/30~2010/09/11

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

東京都写真美術館で大作中心の個展を開いてるオノデラの、こちらは小品中心の展示。とりすました公式作品ではない、非公式の「思考のエスキース」といった魅力がある。

2010/08/06(金)(村田真)

SOSHI MATSUNOBE 松延総司 DIRECTION OF MATERIALS

会期:2010/06/11~2010/08/08

SUPER WINDOW PROJECT & GALLERY[京都府]

7月に開催されたアートフェア「ART OSAKA 2010」の会場にも作品が展示されていたが、以前発表を見て気になっていた松延総司が個展開催中と知って足を運んだ。ギャラリー入口の正面の壁に設置された棚と床に、大小さまざまなサイズの白い紙箱が積み上げられていたり、整然と並列している。それぞれの箱の表面には細い線や円がプリントされているのだが、それらの線の幅もいろいろ。聞くと、箱のサイズも線のプリントも同じパターンはひとつもないのだという。プリントされた黒い線が木目のように見えて、丁寧につくられた紙箱や線の軽やかで繊細な印象と、重量感ある木材のイメージが交錯し、フェイクと本物、二次元と三次元の境界を行き来するような感覚を覚えるのが面白い。白い箱だけで構成された空間自体が美しいのだが、そこに作家の自由な想像と遊び心がうかがえるのも良かった。

2010/08/07(土)(酒井千穂)

北城貴子 展「Circulation of the light」

会期:2010/07/10~2010/08/07

Gallery Nomart[大阪府]

昨年、京都で見た個展とはずいぶん異なる印象の作品が並んでいた。今展で発表された作品群もまた光が降り注ぐ風景を描いたものではあるのだが、以前見た鬱蒼とした木々の間に射し込むゆるやかな光や、水面に反射して揺れ動く日射しといったイメージではなく、もっと視線が近い距離の光景で、強烈にスパークするような眩しさに溢れていた。どの作品も目が眩むほどの明るさが漲っている。足下に咲く花や、緑の生い茂る風景を描いた画面の表層には、白っぽい絵の具の飛沫がまるで踊るように大胆に散っているのだが、それが筆のタッチや画面の豊かな色彩を絶妙に隠し、朧げに見えるモチーフの存在をかえって際立たせ、イメージを広げる。会場の1階に展示された大きな作品は特に圧倒的な雰囲気。強い光が反射する様子やその瞬間の緊張感をたたえた鮮やかで美しい絵画空間に興奮した。

2010/08/07(土)(酒井千穂)

2010年09月15日号の
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