2022年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

2010年09月15日号のレビュー/プレビュー

桑久保徹「海の話し 画家の話し」

会期:2010/08/07~2010/09/26

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

そうか、砂浜に巨大な穴を掘るモノクロームに近い絵を数年前よく見かけたが、作者は桑久保だったんだと今回初めて気がついた。たしかに海岸はいまも描き続けているが、色彩がぜんぜん違う。ていうか、この色彩の発見こそ現在の桑久保を桑久保たらしめているもの。聞くところによると、彼は自分のなかに「クウォード・ボネ(クワクボ+クロード・モネ)」という架空の画家を設定し、彼に描かせているのだそうだ。なるほど、これなら他人事のように描けそうな気がする。

2010/08/18(水)(村田真)

尾仲浩二「馬とサボテン」

会期:2010/08/17~2010/09/10

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

尾仲浩二のような旅の達人になると、日本全国どこに出かけても、安定した水準で写真を撮影し作品化することができる。それどころか、その揺るぎないポジション取りと巧みな画面構成力は、外国でもまったく変わりがない。写真集『フランスの犬』(蒼穹舎, 2008)は、1992年のフランスへの旅の写真で構成されているし、EMON PHOTO GALLERYでは2007年に続く2回目の作品発表になる今回の「馬とサボテン」は、同年のメキシコへの旅がテーマだ。それでも、それぞれのシリーズに新しい試みを取り入れることで、彼なりに旅の新鮮さを保とうとしているようだ。それが今回は、パノラマカメラを使った写真群ということになるだろう。時には普通は横位置で使うカメラを縦位置にして、前景から後景までをダイナミックにつかみ取るような効果を生み出そうとしている。
その試みはなかなかうまくいっているのだが、基本的には日本でも外国でも被写体との距離の取り方がほぼ同一なので、安心して見ることができる反面、驚きや衝撃には乏しい。もっとも、尾仲のようなキャリアを積んだ写真家に、それを求めても仕方がないだろう。むしろそのカメラワークの名人芸を愉しめば、それでいいのではないだろうか。展示では、これまた名人芸といえるカラープリントのコントロールの巧さも目についた。メキシコには「尾仲カラー」とでもいうべき渋い煉瓦の色味の被写体がたくさんある。まるで闘牛場の牛のように、彼がその赤っぽい色にエキサイトしてシャッターを切っている様子が、微笑ましくも伝わってきた。

2010/08/19(木)(飯沢耕太郎)

続・朝鮮通信使2010

会期:2010/08/06~2010/08/31

ソウルから越後妻有まで[ソウルから越後妻有まで]

BankART自身が企画・実践する必殺プロジェクト。江戸時代に行き来した朝鮮通信使を現代によみがえらせようというもので、ソウルからメンバーを増減させながら釜山、対馬を通り、下関から船をチャーターして瀬戸内国際芸術祭にジョイント。その後は大阪、名古屋、横浜などに寄って最後は越後妻有まで行ってしまおうという無謀な計画だ(ちなみにソウルと越後妻有は緯度がほぼ同じ)。この間、BankARTのスタッフはほぼ全員が参加するため、BankARTは空っぽ状態。というより、BankARTそのものが日韓を移動してる状態というべきか。残念ながらぼくは1日だけの参加だったが、この日が道中もっとも参加者が多かった(日韓合わせて20人以上)という。今朝、高松空港から高松駅に向かい、スタッフと落ち合ってチャーター船で直島へ。地中美術館、家プロジェクトを見て、大竹伸朗の「I�・湯」を時間がないので外から鑑賞。それにしてもすごい人出、とりわけ直島は芸術祭の中心的な場所だからとくに人が多いようだ。高松に戻り、日韓で宴会。

2010/08/19(木)(村田真)

ヤマザキマザック美術館所蔵作品展

会期:2010/04/23

ヤマザキマザック美術館[愛知県]

朝、高松駅からJRで瀬戸大橋を渡り、岡山でのぞみに乗り換えて名古屋へ。所要時間3時間たらずで昼前に着く。ぼくが子どものころだったら1日がかり、江戸時代だったら1カ月はかかったぞ。まずは新栄町に出て、この4月にオープンしたばかりの美術館に寄る。日本の企業美術館というとたいてい印象派かエコール・ド・パリだが、ここは珍しくヴァトー、ブーシェ、フラゴナールとロココ絵画が並ぶ。印象派は高騰して手が届かないから盲点ともいうべきロココに走ったのかもしれないが、わが国にはロココ絵画が少ないからそれはそれでひとつの見識といえる。と思ったら、なんだモネもモディリアーニもあるではないか。とりわけ多いのがヴラマンクとスーティン。結局、作品のよしあしや好き嫌いより、値段で購入を決めてるんじゃないかって気がしてきた。

2010/08/20(金)(村田真)

あいちトリエンナーレ2010

会期:2010/08/21~2010/10/31

愛知県美術館、名古屋市美術館ほか[愛知県]

横浜より後発だし、メイン会場は美術館だし、越後妻有や瀬戸内のような旅情もないし、にゃんつったってニャゴヤだし……ぜんぜん期待しないで見に行った。が、建畠さん失礼しました、すごくおもしろかったです(建畠晢氏は芸術監督)。毛皮を継ぎはぎして巨人像をつくった張洹(ジャン・ホァン)、ダジャレのようにネタを繰り出すトム・フリードマン、2階のテラスからときどき本が落ちてくる孫原+彭禹(スン・ユァン+ポン・ユゥ)、抽象表現主義絵画を映像で動かしたような小金沢健人、コンピュータの画面を手づくりで演じてみせるアーヒム・シュティーアマン&ローランド・ラウシュマイアーなど、諧謔的でユーモアに富んで視覚的インパクトも強い作品が多い。まさに「都市の祝祭」にふさわしい頽廃的作品ばかり。近ごろ越後妻有や瀬戸内でエコ系や癒し系にいささか食傷気味だったこともあって、その反動かも。長者町の空きビルを使った淺井裕介や渡辺英司らのインスタレーションも力作。ぼくの知る限り、これまで日本で開かれた国際展のなかで最良のものだといっておこう。ぜひ見に行くべし。

2010/08/20(金)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00010355.json s 1221298

2010年09月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ