artscapeレビュー

2015年07月15日号のレビュー/プレビュー

カール・エーン《カール・マルクス・ホフ》/オットー・ワグナー《ヌスドルフ水門》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:1930年/1898年

社会主義的な色彩が強いプロジェクトの《カール・マルクス・ホフ》へ。学生のとき以来だから、四半世紀ぶりの訪問である。変わらず、駅前に普通に建っていた。複数の街区を横断する巨大な建築連続体=集合住宅であり、天理教のおやさとやかた計画にも似ている。次にワグナーによるヌスドルフの堰と橋を見学した。これは美しい土木デザインである。

写真:上(2枚)=《カール・マルクス・ホフ》、下(2枚)=《ヌスドルフ水門》

2015/06/21(日)(五十嵐太郎)

ヨゼフ・プレチェニク《聖霊教会》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:1910年

プレチェニックの《聖霊教会》へ。こちらは15年ぶりくらいだ。彼は少し変わったかたちをつくる建築家だが、これはやや控えめである。外観は重厚な神殿風、内部は一転して明るい。日曜の礼拝中なので、生き生きとしているタイミングだった。

2015/06/21(日)(五十嵐太郎)

オットー・ワグナー《ホーフ・パヴィリオン》《シュタインホフ教会》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:1899年/1907年

続いて、ワグナーによるヒーツィング駅の《ホーフ・パヴィリオン》へ。こちらも内部に資料展示が入り、偉大なる近代建築家を都市の歴史に位置づけようとする強い意志が感じられた。今度は病院群の丘を登って、ワグナーのシュタインホフの教会へ。学生のとき以来の訪問である。内外ともに、重さを感じさせない、彼らしいパッチワーク的な被膜が全身を覆う。都市建築と違い、周囲との調和を意識する必要はないが、それでも植物に傾倒したアール・ヌーボーなどに比べて、ワグナーのデザインは古典主義的な要素が残る。

写真:左=《ホーフ・パヴィリオン・ヒーツィング駅》、右=《シュタインホフ教会》

2015/06/21(日)(五十嵐太郎)

オルトナー&オルトナー《レオポルト美術館》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:2001年

オルトナー&オルトナーが設計した《レオポルト美術館》へ。外観の直方体はそれほど主張せず、やや理解に苦しむ開口の位置だが、内部に入ると、展示室から外が見える大きな窓の配置などが絶妙である。まさに「空間」の立体的な構成が素晴らしい建築だ。ここはエゴン・シーレのコレクションで有名だが、彼の描く建築や街並みの絵も意外に面白いのは発見だった。

2015/06/21(日)(五十嵐太郎)

ゴットフリード・ゼンパー+カール・フォン・ハーゼナウアー《自然史博物館》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:1891年

向き合う《美術史博物館》と同じ外観だが、内部はどうなのかを確認すべく、ゼンパーの《自然史博物館》に初めて入場した。中心のホールと大階段は同じだが、展示室のプラン、天井高、装飾は少し違う。動物よりも、人間から一番遠い、海の生物、昆虫、鉱物などが、バロック時代の「驚異の部屋」的で面白い。過剰かつ悪趣味な展示方法もインパクトがある。

2015/06/21(日)(五十嵐太郎)

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