artscapeレビュー
海老優子「鳥が鳴いたら2」
2013年08月15日号
会期:2013/07/02~2013/07/14
ギャラリーモーニング[京都府]
昨年、同ギャラリーで同じ時期に作品を発表していた海老優子が、今回も同じ展覧会タイトルで個展を開催していた。鈍い空の色と自然の風景、そこにぽつりと描かれた無機質なコンクリートの建物や構造物の存在。海老が描く寂寥の景色には、ついつい物語の脈絡を探りたくなるような不安定な魅力がある。つかみどころのない頼りない雰囲気と、融和しないイメージのモチーフという違和感がこちらの心をとらえてやまない。それぞれのタイトルも物語性が強いのだが、大きなサイズの絵画の両脇に小さなドローイングを合わせた連作など、今展で発表された新作はいっそうストーリーへの想像を巡らせるものになっていた。もう少し高いところに上ったら、塔の先にどんな風景があるのか確認できるかも知れない。もう少し先まで進めば、塀の向こうに何かが見えるかもしれない。いま見ているものの先に何かがあるという期待感や兆しも感じ、作品世界に引き込まれていくから見ていて楽しい。次回の個展も待ち遠しい。
2013/07/14(日)(酒井千穂)