2019年10月15日号
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artscapeレビュー

アンドレアス・グルスキー展

2013年08月15日号

会期:2013/07/03~2013/09/16

国立新美術館[東京都]

グルスキーはドイツ写真の代表的アーティストで、80年代にベルント&ヒラ・ベッヒャーの下に学んだいわゆるベッヒャー・シューレのひとり。基本的に同じような要素(人、窓、商品、記号など)が無数に凝集した全焦点的な風景写真で知られる。風景写真といっても現実の風景ではなく、精巧にデジタル加工した人工的な視覚世界だ。その構築的な画面構成から彼の写真はしばしば絵画にたとえられる。たしかにオールオーバーな巨大画面は抽象表現主義を思わせるし、現代社会の一面をモチーフとしている点はポップアートを、無機質な繰り返しはミニマルアートを想起させずにはおかない。ジャクソン・ポロックの《ワン:ナンバー31》を撮った《無題VI》などは、自己言及的なコンセプチュアルアートだ。もちろんこの《無題VI》に明らかなように、絵画に比べれば物質性が希薄で、ふつうのストレート写真よりさらに透明度が高く、いってみれば表面しかない。それゆえに、大勢の人がうごめく職場を撮っても、大量の商品が並ぶマーケットを撮っても、はるか向こうまで続くゴミ捨て場を撮っても、それらの光景はシリアスな社会批判にはなりえず、どこか表層的でマンガチックで、笑いすら誘うのだ。ひとつ不思議に思ったのは、彼の作品は基本的に大型(2×3メートル程度)だが、展示ではときおり小さなサイズの作品(40×60センチ程度)が差し挟まれていること。カタログではすべてがほぼ同じ大きさに掲載されており、写された内容からサイズが決められたとも思えないのだ。ではなにがサイズを決めたんだろう。

2013/07/02(火)(村田真)

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