2020年02月01日号
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artscapeレビュー

石川真生「沖縄芝居 仲田幸子一行物語/港町エレジー」

2013年08月15日号

会期:2013/06/15~2013/08/11

nap gallery[東京都]

沖縄の”女傑”、石川真生の数ある作品のなかでも、「港町エレジー」は特に好きなシリーズのひとつだ。1983~86年、港に近い飲み屋に夜ごとたむろする中年男たちを撮影したシリーズだが、彼女の被写体との絶妙な距離のとり方が見事に発揮されている。最近新たな編集で刊行された『熱き日々inオキナワ』(フォイル)でもそうなのだが、石川は流動し、沸騰する時空のただなかに身を置きながらも、そこに完全に没入することなく、ある意味冷静に状況を見つめ、シャッターを切っていく。「港町エレジー」に登場する酔っぱらいの男たちの、どうしようもないふるまいを許容しつつも、写真の被写体としての可能性をしっかりと値踏みしているのだ。こういう写真シリーズは、石川真生以外にはまず撮れないだろう。
同時に展示されていた「沖縄芝居 仲田幸子一行物語」は、歌あり笑いあり涙ありの庶民のエンターテインメントの一座を率いる仲田幸子を、1977~91年にかけて、14年あまりも追いかけた労作。男性に対する、したたかで容赦のない眼差しが、女性を中心にしたこのシリーズでは少し和らいでいるように感じる。沖縄の人々への愛着と共感が、切ないほどに伝わってくることには変わりはないのだが。
なお、本展はnap galleryで不定期で開催されている「ヴィンテージ・プリント展」の3回目にあたる。今回は撮影と同時期にプリントされた印画が、40点あまりも並んでいた(100点以上のファイルから厳選)。たしかにその時代の空気感が、生々しく写り込んでいるように感じる。

2013/07/11(木)(飯沢耕太郎)

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