2019年10月15日号
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artscapeレビュー

村上誠「水迎え 南島の“死”の光景」

2013年08月15日号

会期:2013/07/03~2013/07/16

銀座ニコンサロン[東京都]

銀座と新宿のニコンサロンは、なかなか油断できない写真展の会場だ。その大部分は、やや型にはまったスナップ/ドキュメンタリー系の作品展示なのだが、時折思いがけない写真の仕事を見ることができる。今回銀座ニコンサロンで開催された村上誠の「水迎え 南島の“死”の光景」も、そんな驚きを与えてくれる写真展だった。
村上が撮影しているのは宮古諸島や多々良島など、南島の森や洞窟の奥に潜む死の気配が色濃く漂う場所の光景だ。この種の写真は、どこかおどろおどろしいスペクタクル性を強調したものになりがちだが、村上はあくまでも控えめで、慎ましやかな態度で被写体に接している。かといって記録的な描写に徹しているわけではなく、そこには彼が「見たい」と欲したものが、きちんと写り込んでいるように感じる。それこそが「水迎え」、すなわち「水の流れる足元、地面の下の方で紡ぎ出されていた……“死の影”」を捉えようとする営みにほかならない。ニコライ・ネフスキーの『月と不死』のなかにある「死水」の物語に触発されたその探求の成果は、会場に展示された16点の大判カラープリントにしっかりと写り込んでいるのではないだろうか。
村上は本来写真家ではなく、美術教育に携わりながら、1988〜2003年に「天地[あまつち]耕作」というアートプロジェクトを立ち上げ、大地との交感に根ざした作品を発表してきたアーティストだ。彼のような、異なる領域から越境してきた人の写真の仕事は逆に面白い。より挑発的で刺激的なものになっていく可能性を感じる。

2013/07/10(水)(飯沢耕太郎)

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