2020年04月01日号
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artscapeレビュー

福田美蘭 展

2013年08月15日号

会期:2013/07/23~2013/09/29

東京都美術館[東京都]

以前、作者の口から「プランが決まれば9割は完成」という言葉を聞いたことがある。描くべき内容が最重要で、あとはそのプランに従って描いていくだけだと。これはある意味、古典絵画の考え方に近い。油彩画以前のフレスコ画では、下絵(プラン)さえ完璧ならあとは色を塗る作業だけだからだ(油彩以後になると、描きながら考え、考えながら描いていくことが可能になる)。しかも彼女はアイディアが明快なうえ描写力が抜群なので、なおさら「描くこと」が手段に堕している印象を与える。キャンバスに油彩ではなくパネルにアクリルで描いてることも、また名画の模写が多いことも、彼女の「描くこと」に対する頓着のなさを物語っていないか。久しぶりに、しかも大量に福田美蘭の作品を見てそう思った。ところが2011年の《磔刑図》以降の新作を見ると、表現主義的な筆触が目立ち始め、「描くこと」がたんなる作業ではなく「喜び」でもあるように感じた。東日本大震災を報じる新聞を描いた《春─翌日の朝刊一面》、宗達を換骨奪胎した《風神雷神図》、ゴッホの《薔薇》を大画面に展開した《冬─供花》などにそれを感じる。もっとも彼女の場合、表現主義的といっても無意識や偶然性の入り込む余地は少なく、滴り落ちる絵具まで描き込む程度には自覚的だが。

2013/07/24(水)(村田真)

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