2019年10月01日号
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artscapeレビュー

平間至「last movement─最終の身振りへ向けて」

2013年08月15日号

会期:2013/07/06~2013/08/31

フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]

平間至は2008年にも、同じフォト・ギャラリー・インターナショナルで舞踊家・田中泯の「場踊り」を撮影した写真展を開催している。それから5年を経て姿をあらわした「last movement─最終の身振りへ向けて」は、以前とはまるでレベルが違って見えた。単純なパフォーマンスの記録ということに留まらない、身体と場所とが溶け合い、一体化して渦巻くエネルギーが、モノクロームの写真群から強い力で放射している様が、はっきりと感じられたのだ。今回の展示作品には、シリーズの主体であるはずの田中泯の姿がまったく写り込んでいないものも含まれている。だが、それらの水や樹木や岩のある風景を捉えた写真もまた、そのあふれ出し、盛り上がり、流れ去っていくエネルギーの”場”であることに変わりはなく、むしろその風景の至る所に「見えない」舞踊家が遍在しているようにすら見えた。明らかに、存在の震えや揺らぎを鋭敏にキャッチする平間のセンサーが、研ぎ澄まされてきているのだ。
平間の意識の変容をもたらしたのが、2011年の東日本大震災であったことは間違いないだろう。彼の実家がある宮城県塩竈市とその周辺は、震災とその後の津波に寄って大きな被害を受けた。彼はむろん写真家としての活動を通じて、地域の復興に寄与しようとした。だがその後、被災の状況を直接的に記録するよりは、この「last movement」のシリーズを撮り進めることで、むしろ震災によって引き起こされたネガティブな感情の高まりを鎮めようとしているように見える。
実は一枚だけ、写真展に併せて刊行された同名の2冊組の写真集のなかに、震災直後の「宮城県七ヶ浜」の風景を写した写真がおさめられている。だが、この写真にもまた、田中泯の存在の気配が色濃く感じられる気がする。

2013/07/17(水)(飯沢耕太郎)

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