artscapeレビュー
元田久治「東京」
2013年08月15日号
会期:2013/06/21~2013/07/14
アートフロントギャラリー[東京都]
元田は世界の有名建築を廃墟として描いてきたが、今回は東京の廃墟図をリトグラフによって発表している。東京駅、東京タワー、銀座4丁目、浅草雷門、新宿歌舞伎町、国会議事堂、東京ディズニーランド……、東京人ならだれもが知ってる風景が、あわれ廃墟と化しているのだ。よく見るといろいろ発見があって楽しい。東京駅は戦後すっかりなじんだ駅舎ではなく、復元したばかりの建物が廃墟化されていること。東京スカイツリーにはツタが絡まり、六本木ヒルズの森タワー屋上は箱庭になってスケール感を混乱させていること。崩れかけた二重橋はあるけど、廃墟となった御所や宮殿はないこと。絶妙なのは、自由の女神像。一見ニューヨークかと思ったら、背後に大きな橋と東京タワーが見えるのでお台場のレプリカとわかる。しかも橋やタワーは破損しているのに、この像はブロンズ製でサイズが小さいせいかまったく傷ついてない。芸が細かいのだ。「江戸名所図絵」ならぬ「東京廃墟図絵」。
2013/07/03(水)(村田真)