2020年08月01日号
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artscapeレビュー

ウルの牡山羊 シガリット・ランダウ展

2013年08月15日号

会期:2013/05/17~2013/08/18

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

メインの部屋では、4面の縦長スクリーンにそれぞれ樹木が映されている。その幹を大きな機械の腕が挟んで轟音とともに激しく揺さぶると、土煙とともになにかがバラバラと落ちてくるのがわかる。これはなんだ? 見たことない光景に心がざわめく。落ちてきたのはオリーブの実。実際こんな手荒な方法で収穫するんだろうか。これはイスラエル南部のネゲブ砂漠にあるオリーブ園で撮影されたもの。もう一方の部屋では、キッチンやリビングに時代遅れの家具が並ぶ50年代のイスラエルの居住空間が再現され、ランダウの親族との関係が示唆されている。タイトルの「ウルの牡山羊」とはメソポタミアで発掘された古代彫刻のことで、神の命でアブラハムが息子のイサクを生贄に捧げようとした旧約聖書(ユダヤ教の聖典でもある)の創世記に由来するもの。ランダウはイスラエルとユダヤ人の記憶を呼び起こすような作品を制作しているが、歴史も文化も異なる日本人には遠すぎて届きにくい。とくに後者のように私的な関係性から紡ぎ出された作品は、たとえそれが民族全体の問題に敷衍できるにしても共感するのは難しい。直接的な言及より、前者のような得体の知れない映像のほうが心に響くものだ。

2013/07/16(火)(村田真)

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