artscapeレビュー
モネ、風景をみる眼
2013年08月15日号
会期:2013/07/13~2013/11/24
ポーラ美術館[東京都]
プレス関係者のため銀座からバスが出るというので乗ってみた。箱根町仙石原にあるポーラ美術館へは初訪問。こんな機会でもなければ行けないもんね。行ってみて少し驚いた。いわゆるリゾート地に建つ美術館のなかではマシなほうだとは思っていたが、建物もコレクションも学芸体制も予想以上にしっかりしていた。こんなリッパな美術館が活火山のカルデラ内にあることに驚いたのだ。そのせいか、建物は巨大な円形壕を掘って免震ゴムを設置した上に載せている。すごいぞポーラ。今回の「モネ展」は国立西洋美術館との初の共同企画。西洋美術コレクションでは日本を代表する国立美術館と肩を並べたわけだ。やったぜポーラ。展示はいきなり、西美の《舟遊び》とポーラの《バラ色のボート》との対決で幕を開ける。どちらも池に浮かべたボートにふたりの女性が乗っている絵で、右からボートが突き出している構図も同じだし、サイズも制作年も近い。もちろん違いもたくさんあるが、もっとも気になった違いは画面にガラスがはめられているかどうかだ。ポーラははめているが、西美ははめてない。そして、明らかにはめてないほうが美しく見える。先日見た「プーシキン美術館展」以来、ガラスの有無が気になってしかたがないのだ。その後の作品も、ポーラは入ってるけど、西美は入ってないものが多い。おそらく西美は鑑賞を優先してガラスを入れないのではなく、たんに予算がないだけなんだろうね。閑話休題。同展はモネだけでなく、コローからクールベ、ピサロ、セザンヌ、ゴッホ、ピカソまで広げ、さらにロダンの彫刻やガレの花器なども出ていて、タイトルの「モネ、風景をみる眼」を踏み外してるんじゃないかと思うけど、たとえばシャヴァンヌの《貧しき漁夫》(西美)とピカソの《海辺の母子像》(ポーラ)みたいに、似たような主題・構図の絵を隣り合わせに並べるなど、見る喜びを刺激する工夫が随所に見られる。こういう「遊び」はコレクションが豊富でないとできないものだ。出品は計99点、うち西美48点、ポーラ51点。あらためてポーラの実力を再認識しました。
2013/07/17(水)(村田真)