2019年10月15日号
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artscapeレビュー

トーキョー・ストーリー2013 第3章「私をとりまく世界」

2013年08月15日号

会期:2013/07/13~2013/09/23

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

TWSのレジデンス・プログラムに参加したアーティストによる成果発表展。今回は海外に派遣された池田剛介、奥村雄樹、東京に招聘されたヌール・アブアラフェ(パレスチナ)、モハメド・アブデルカリム(エジプト)、スッティラット・スパパリンヤ(タイ)の5人。しかし展示を見ると、奥村の作品が見当たらず、代わりに井出賢嗣が入っている。はて? リーフレットによれば、奥村は2国間交流事業プログラムでバーゼルに滞在していたが、同プログラムに選ばれなかった井出に、もしバーゼルに滞在していたらつくったであろう作品を制作せよとの指示を送ったという。それに対して井出は、落選者に制作を依頼するのはバカにしていると述べ、この話をニシノという旧友にしたところ、作品を提供してくれたという。つまり奥村は井出に指示を出しただけで作品は出さず、依頼された井出も自分の作品を出すことなく、旧友の作品を展示したというのだ。もしこの話がホントなら、奥村は2カ月半におよぶ滞在制作期間中に上記の指示を出しただけ、しかもその指示は実現しなかったということになる。でもそれは考えにくいので、一部始終がふたりで仕組んだコラボレーション作品だったと見るべきかもしれない。しかしふたりは当落を分けた間柄なので(それもつくり話かもしれないが)、対等なコラボレーションというのは考えにくい。となると、奥村の指示は井出によって実行された、つまり井出は怒りつつか怒りを装いつつかは知らないが、奥村の指示を受け入れてこのような作品に至ったとも考えられる。いずれにせよこれは、レジデンス・プログラムを渡り歩くアーティストによる、レジデンス・プログラムそのものを俎上に載せた作品といえるだろう。

2013/07/31(水)(村田真)

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