2019年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2012年08月15日号のレビュー/プレビュー

國府理「ここから 何処かへ」

会期:2012/07/28~2012/09/09

京都芸術センター ギャラリー北・南[京都府]

國府理の個展が京都芸術センターで開催されている。作品点数は少ないが、自動車が動く作品や屋上に設置された大きな風車、その風車の発電によって点灯するライトの下で育つ植物の作品など、見ているとじつに「ワクワクする」と言いたくなるような期待感と希望が湧いてきて胸が踊る。人間と機械技術、自然との関係についても思いを廻らせる。「ここから 何処かへ」という展覧会タイトルのとおり、未来のさまざまな出会いへの想像も広がる展覧会。

2012/07/28(土)(酒井千穂)

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012

会期:2012/07/29~2012/09/17

越後妻有地域(新潟県十日町、津南町)[新潟県]

越後妻有アートトリエンナーレ2012のオープニング・ツアーに参加した。改めて街なかで場所の確保に苦労するあいちトリエンナーレに比べて、幾つもの小学校や空き家をまるごと会場に使える前提条件の違いを痛感する。例えば、新登場の土をテーマにしたもぐらの館と、中国作家の参加するアジア写真映像館、作品が増えた絵本と木の実の美術館は、いずれも廃校を活用している。建築系での新作は、みかんぐみの茅葺きの塔、オーストラリア・ハウスやアトリエワンによる展示施設、杉浦久子研のインスタレーションなどが登場した。またCIANでは、川俣正が故中原佑介の蔵書を入れる場として、本棚をバベルの塔のように積み、体育館をなかなか迫力のあるアーカイブ空間に変容させていた。今回からキナーレは現代美術館に変身し、中庭にボルタンスキーの大スペクタクル作品をドーンと置く。またbankart妻有では、各部屋に膨大な小作品が増殖したことを知る。第1回こそ見逃したが、2003年、2006年、2009年、2012年と四度目の訪問だった。ド派手な新築物件は減ったが、定期的にトリエンナーレを継続していくことで得られる蓄積が増え、ポスト過疎化のそれ自体の新しい歴史を刻みはじめていることがよくわかる。

写真:左上=みかんぐみ+《下条茅葺きの塔》、右上=オーストラリア・ハウス、左中=アトリエ・ワン+東京工業大学塚本研究室《船の家》、右中=杉浦久子+杉浦友哉+昭和女子大学杉浦ゼミ《山ノウチ》、左下=川俣、右下=クリスチャン・ボルタンスキー《No Man's Land》

2012/07/28(土)・29(日)(五十嵐太郎)

大地の芸術祭──越後妻有アートトリエンナーレ2012

会期:2012/07/29~2012/09/17

新潟県十日町+津南町[新潟県]

上越新幹線、ほくほく線を乗り継いで十日町で下車、受付を済ませてプレス用バスツアーで出発。同乗したのは、ピー浜美術館館長やピー浜市芸術文化振興財団専務理事やピー日新聞美術記者やピー摩美術大学教授やピーメディア・デザイン研究所所長など美術関係者が多いせいか、ボランティアのガイド(ピー原プー子さん)は専門的な解説を避け、明るく楽しくをモットーに振る舞っていた。まず向かったのはアジア写真映像館。廃校となった小学校の校舎でロンロン&インリ、森山大道、石川直樹ら日中の写真や映像を公開しているが、こんな場所で見せられてもな。続いて鉢&田島征三の絵本と木の実の美術館でメシ食って、松代の農舞台に寄り、松之山のオーストラリア・ハウス、マリーナ・アブラモヴィッチの《夢の家》、ジャネット・ローレンスの《エリクシール/不老不死の薬》、ローレン・バーコヴィッツの《収穫の家》などを訪れた。このうち農舞台の新作とオーストラリア・ハウス以外は、いずれも既存作品を改修したりヴァージョンアップさせたもの。オーストラリアは以前、古い農家を借りて作品を見せていたが、地震で全壊したため別の場所に作家の滞在施設も兼ねた展示施設を新築。力を入れてるなあ。再び松代に戻り、昨年亡くなった中原佑介氏の約3万冊もの蔵書を積み上げた川俣正のインスタレーションを鑑賞。これは圧巻。最後にBankART妻有に寄って、十日町の越後妻有里山現代美術館「キナーレ」のオープニングへ。この現代美術館は原広司設計の交流館の回廊部分をギャラリーにしたもの。中央の中庭にはクリスチャン・ボルタンスキーの古着を積み上げたインスタレーション、ギャラリーにはカールステン・ヘラー、レアンドロ・エルリッヒ、ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー、クワクボリョウタらの作品が並んでいる。こんな場所に並べられてもな。夜は松代のBankART妻有に宿泊。

2012/07/28(火)(村田真)

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第28回東川賞受賞作家作品展

会期:2012/07/28~2012/08/19

写真の町・東川町文化ギャラリー[北海道]

北海道上川郡東川町は1985年に「写真の町」を宣言し、毎年夏に東川町国際写真フェスティバル(フォト・フェスタ)を開催し始めた。今年はもう28回目ということで、僕は1980年代末からその変遷を見ているのでとても感慨深いものがある。最初の頃は町民との一体感がまったくなく、会場は閑散としていた。だが当地の夏祭りと同時期に開催されるようになり、全国の高校写真部の精鋭が集結する「写真甲子園」も話題を集めるようになって、近年は大いに盛り上がりを見せるようになった。写真の恒例行事として、完全に定着したのは素晴らしいことだと思う。
今年は「赤レンガ公開ポートフォリオオーディション」のレビュアーのひとりとして招聘されたのだが、東川町文化ギャラリーで開催されていた「第28回東川賞受賞作家作品展」がかなり面白かった。フォト・フェスタの目玉でもある東川賞の今年の受賞者は、海外作家賞がアリフ・アシュジュ(トルコ)、国内作家賞が松江泰治、新人作家賞が志賀理江子、北海道ゆかりの写真家に与えられる特別作家賞が宇井眞紀子、地域に根ざした活動を長く続ける写真家を対象にした飛騨野数右衛門賞が南良和だった。この5人の組み合わせは、ジャンルも年齢も経歴もまったくバラバラなのだが、逆にそれが写真という表現メディアの広がりと可能性をさし示していて興味深いものだったのだ。
会場の入口から、南が1950年代以来撮影し続けている埼玉県秩父の記録写真、アシュジュのイスタンブールを撮影したパノラマ写真、松江の「地名の収集」として続けられている巨視的な風景作品、志賀の「Lily」「Canary」そして新作の「螺旋海岸」のシリーズ、宇井のアイヌの女性運動家、アシリ・レラの活動の記録が並ぶ。そのつながり具合が絶妙で、あたかも写真という生きものの体内を巡っているようなスリリングな視覚的体験を愉しむことができた。特に11月にせんだいメディアテークで本格的に展示されるという志賀の「螺旋海岸」は、現在の日本の写真表現を大きく左右していく可能性を秘めた重要な作品になっていくだろう。さまざまな貴重な出会いを誘発する場としてのフォト・フェスタの役割は、今後より大きくなっていくのではないかと思う。

2012/07/29(日)(飯沢耕太郎)

大地の芸術祭──越後妻有アートトリエンナーレ2012

会期:2012/07/29~2012/09/17

新潟県十日町+津南町[新潟県]

朝、十日町に出て芸術祭のオープニング。いつもキナーレの広い中庭で行なうのだが、今回はボルタンスキーが古着を敷きつめてしまったため使えず、駐車場の隅っこで華々しい開催となった。再びバスに乗って見学ツアー。今日のガイドさんは今回の芸術祭の公式ガイドブックの編集も手伝ったピー峰プー佳さんで、『中原佑介美術批評選集』の編集にかかわっているため、車内で披瀝してくれた「大地の芸術祭と中原批評」はとても示唆に富んでいた。今日はまず、津南町にある蔡國強のドラゴン現代美術館(アン・ハミルトンの個展を開催中)を訪れ、近くの廃屋でやっていたアン・ハミルトンの音の出る作品を鑑賞。昼食のソバをたぐってから、JR飯山線アートプロジェクトを見に行く。利用客が減る一方のローカル線の駅にアートを設置して活性化させようという試みで、越後田沢駅のアトリエ・ワンと河口龍夫による《船の家》、下条駅のみかんぐみ+神奈川大学曽我部研究室による《茅葺きの塔》のふたつ。下条駅の近くでは小沢剛らが明治初期の《油絵茶屋》を再現している。十日町に戻り、廃校に土の作品を集めた《もぐらの館》を見て、最後に中心街の空き店舗を利用した4組の作品を回り、駅前で解散。

2012/07/29(水)(村田真)

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2012年08月15日号の
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