2019年08月01日号
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artscapeレビュー

2012年08月15日号のレビュー/プレビュー

柳本史歩「生活について」

会期:2012/07/21~2012/07/31

コニカミノルタプラザ ギャラリーC[東京都]

柳本史歩は1990年代から、しっかりとした技術に裏づけられた、端正なモノクロームのスナップショットを発表し続けてきた。力のある写真家なのだが、自分の写真の世界をどのように展開していくのか掴み切れていないのではないかという思いがずっとあった。だが、今回の個展「生活について」を見て感じたのは、彼が素晴らしい鉱脈を掴みかけているのではないかということだった。
柳本は東日本大震災の前から、岩手県下閉伊郡山田町を何度となく訪ねて撮影を続けてきた。岩手県の太平洋沿岸、宮古と釜石の間にあるこの港町に通うようになったのは、いくつかの偶然の積み重ねだったようだが、海に生きる男たちが織り成す荒々しい光景のたたずまいは、彼の写真の質を少しずつ変えていったのではないかと思う。今回の展示からは、大きな痛手を受けながらも、次第に日常の秩序が恢復しつつある震災後の山田町の「生活」のディテールが、細やかに、だが力強く浮かび上がってくる。
写真に挟み込むように展示されているテキストが、効果的に働いていることにも注目すべきだろう。単純な解説ではなく、かといってまったくかけ離れているわけでもなく、彼が出会った光景や人々との関係を柔らかに描写していく文章が、写真ととてもうまく絡み合っている。むろん今回の展示は中間報告と言うべきものであり、今後さらに長期間の撮影を続けていくことで、「下閉伊サーガ」とでも言うべき写真=物語に育っていくことが、大いに期待できそうだ。

2012/07/31(火)(飯沢耕太郎)

カタログ&ブックス│2012年8月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

3.11/After 記憶と再生へのプロセス

監修:五十嵐太郎
発行日:2012年8月15日
発行:LIXIL出版
価格:2,625円(税込)
サイズ:A5判、319頁

2012年3月仙台と、フランス・パリで開催された建築展「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」の展覧会採録と、東北大学せんだいスクール・オブ・デザイン特別講義「復興へのリデザイン」でのレクチャーを基にまとめられた。巻頭対談として隈研吾と五十嵐太郎「After 3.11 を生きるということ。」、巻末「[ブックレビュー]震災を読む25冊」など。



インタラクションデザイン/RCAデザイン教育の現在 神戸芸術工科大学レクチャーシリーズII……5

編集:神戸芸術工科大学デザイン教育研究センター
発行日:2012年3月27日
発行:新宿書房
価格:2,100円(税込)
サイズ:A5変判、168頁

イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で行われている最先端の「インタラクション・デザイン」の研究と教育メソッドを紹介する。RCAのアンソニー・ダン教授へのインタビューやRCAのデザイン・インタラクション学科で学んだスプツニ子! の大学特別講義を収める。他に学生などによるプロジェクト作品を紹介。[新宿書房サイトより]



パリの運命

著者:ル・コルビュジエ
翻訳者:林要次、松本晴子
発行日:2012年7月30日
発行:彰国社
価格:1,260円(税込)
サイズ:四六変判、92頁

ル・コルビュジエがパリの運命を託したのは、人と生が輝く都市であり、すまいだった。ル・コルビュジエの《輝く都市》の入門書にして、その核心『パリの運命』。[彰国社サイトより]



NAOSHIMA NOTE 2012.6 建築でみるベネッセアートサイト直島

編集:ベネッセアートサイト直島
発行日:2012年6月5日
発行:ベネッセアートサイト直島
サイズ:B5判/16頁

1992年のベネッセハウス以来のそれぞれの建築家の思想を反映しつつ、場の特性を深く読み込んだ空間をもち得た、周囲の環境、自然、そしてアート作品と一体になっている建築が建設されてきた。ベネッセアートサイト直島のアートや自然と同様に、建築の重要性を常に考え、島の風土や歴史を尊重し、瀬戸内海の光や空気、海や木々に溶け込んだ建築を建築家と共に目指してきた直島、豊島、犬島の建築を通して、これまでのベネッセアートサイト直島を振り返る。「ベネッセアートサイト直島20年建築史」、五十嵐太郎による「建築と美術と風景が融合し、世界のどこにもない場所をつくる」掲載。



インタラクションデザイン KDU, RCA, MAU, IAMASジョイントワークショップ2012報告

編集:神戸芸術工科大学デザイン教育研究センター
発行日:2012年6月20日
サイズ:A5判/167頁

神戸芸術工科大学にて2011年度共同研究「情報化社会における大学のデザイン導入教育に関する研究」の研究教育プログラムの一環として、ロンドンRCAからデザイナーのフィオナ・レイビイ氏を招聘、武蔵野美術大学情報科学芸術大学院大学、神戸芸術工科大学の三大学ジョイントによるデザインワークショップの記録。1日のうちのコアタイムはすべて英語でコミュニケーションを行なうなかでの、学生らのアイデアあふれるプロジェクト提案、プレゼンテーションでの活発な討議が行なわれた。



ねもは003

発行日:2012年8月8日
価格:1,300円(税込)
サイズ:A5判、144頁

東北大学大学院有志が制作する建築雑誌。今号の特集は「建築のメタリアル」と題し、現代の情報と物質の関係を明らかにすることで、ジャンルの対立を越えたこれからの建築の「現実」の有り様をかたどる。早稲田大学芸術学校校長である鈴木了二氏や、慶應義塾大学環境情報学部准教授である田中浩也氏のインタビューを掲載。
http://nemoha.blog.fc2.com/

2012/08/15(水)(artscape編集部)

プレビュー:自然学──来るべき美学のために(成安造形大学&滋賀県立近代美術館 連携推進事業)

会期:2012/08/11~2012/09/23

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

成安造形大学とロンドン大学ゴールドスミスカレッジの国際学術交流プロジェクトを発端に、両大学との連携で開催される大規模な展覧会。今世紀のもっとも大きな課題、地球環境問題を欧米とアジアが共有すべきテーマとして、21世紀における自然認識や芸術と自然の関係を日英双方からの視点で掘り下げる。両国それぞれで展覧会と国際シンポジウムなどが開催される予定。日本展での出品作家は、石川亮、宇野君平、岡田修二、木藤純子、ジョン・レヴァック・ドリバー(John Levack Drever)、Softpad、西久松吉雄、馬場晋作、真下武久。9月には出品作家のギャラリーツアーやゲストによるレクチャー、ワークショップなどの関連イベントも行なわれる。

2012/08/20(月)(酒井千穂)

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