artscapeレビュー
2014年06月15日号のレビュー/プレビュー
MOTコレクション 第2部クロニクル1966──|拡張する眼
会期:2014/02/15~2014/05/11
東京都現代美術館 常設展示室1階、3階[東京都]
常設展示のMOTコレクション「第2部 クロニクル1966──|拡張する眼」は、篠原有司男のインテリア・デザインから始まり、磯崎新が関わった「空間から環境へ」展や映画「他人の顔」、そして吉村益信のホワイトハウスのことなども展示され、60年代のジャンル横断の雰囲気が楽しめる。建築の側からも興味深い内容だった。
2014/05/05(月)(五十嵐太郎)
森美術館10周年記念展 アンディ・ウォーホル展 永遠の15分
会期:2014/02/01~2014/05/06
森美術館[東京都]
森美術館の「アンディ・ウォーホル展」は混んでいた。顔などの具象的イメージは機械化された技術=写真を使うが、鮮やかな色彩構成やズレる輪郭などの抽象的な表現は、手の痕跡が強く残るという、20世紀初頭の絵画とは違う方法による具象と抽象の組み合わせが魅力的だ。そして60年代は、メディアがカラー化した時代で、それがよく反映されている。
2014/05/05(月)(五十嵐太郎)
イメージの力──国立民族学博物館コレクションにさぐる
会期:2014/02/19~2014/06/09
国立新美術館 企画展示室2E[東京都]
国立新美術館の「イメージの力」展へ。国立民族学博物館コレクションを使い、ケ・ブランリのように、アート的に見せる。それにしても、民族の違いを超えて、人類が同じく仮面を共通に用いながら、その造形は驚くほどに多様だ。展示の後半における現代のハイブリッド化も刺激的(飛行機の棺桶とか、兵器を素材にしたオブジェなど)である。
2014/05/05(月)(五十嵐太郎)
「手負いの熊」
会期:2014/05/06~2014/05/18
甲斐啓二郎は、同じ会場で2012年10月に「Shrove Tuesday」と題する個展を開催している。イギリスの村に伝わる、作家の原型というべきボール・ゲームの様子を撮影した作品である。今回の「手負いの熊」はその続編というべきだろう。
撮影場所は長野県野沢温泉村で、そこで繰り広げられる「道祖神祭り」が今回の被写体である。「社殿」と称される櫓に火をつけようとする一団と、それを防ごうとする一団が、文字通りの肉弾戦でぶつかり合う。「Shrove Tuesday」もそうだったのだが、甲斐は祭りの全体を俯瞰するようなポジションはまったくとらず、うねりつつ形を変えていく集団の中に、呑み込まれるようにしてシャッターを切る。そのことによって、闇の中で焔が渦巻き、煙が上がり、喧騒に包み込まれる状況が、いきいきと、まさに「生身」の姿であらわれてくる。甲斐が興味を抱いているのは、この祭りがきわめて「競技的」な構造を備えているということだ。かつては神事としておこなわれていた祭礼や行事が、スポーツに転訛していくのは世の東西を問わずよくあることだ。この文脈をさらに深く掘り下げていくと、闘争=ゲームの本質が、写真を通じてくっきりと浮かびあがってくるのではないだろうか。
ただ、もう少し人類学、民族学、神話学などの知を総動員しないと、単なる物珍しい行事の記録だけに終わってしまいそうだ。また、数をこなすよりも、むしろ一つの行事に深く絞り込んでいくことも必要になってくるのではないだろうか。
2014/05/07(水)(飯沢耕太郎)
米田拓朗「Fuefuki Channels」
会期:2014/04/23~2014/05/11
米田拓朗は、この所、山梨県の甲府盆地を流れる笛吹川の流域を撮影場所とする作品を発表してきた。前回の同会場での個展「笛吹川」(2012年4月3日~5月6日)に続いて、今回も川の流れによって摩滅して形をとった「丸石」を主な被写体としている。夏に上流から運ばれてきて、川筋のあちこちに点在するようになった石たちは、冬になると水が減ったり草が枯れたりしてその姿をあらわすようになる。米田はそれらの石の姿を、一つ一つ手で触るように凝視してカメラにおさめていく。会場に展示されていた14点の写真を見ると、水の中に完全に没したものもあれば、半ば姿を見せたもの、地上に顔を出したものなどさまざまな形をとっている。「丸石」は古来信仰の対象になることも多く、道祖神として土台に据えられているものまである。それらの石たちの多彩なあり様に、米田は川の流れがもたらす生活と文化の厚みを、重ね合わせて見ているように思える。
笛吹川のシリーズは、そろそろ写真集にまとめたり、より大きな会場で発表したりする時期にきているのではないかと思う。米田の凝縮した内容の個展の背景には、おそらく膨大な数の写真が撮影されていることが想像できるからだ。ただその時には、おそらく写真だけでなく、作品の成り立ちを丁寧に記述するテキストも必要になってくるだろう。
2014/05/07(水)(飯沢耕太郎)