artscapeレビュー

2015年05月15日号のレビュー/プレビュー

岡啓輔《蟻鱒鳶ル》

[東京都]

ゼミ合宿の最終日は、朝から東京で住宅をまわる。スタートは岡啓輔の《蟻鱒鳶ル》へ。着工して10年を迎える、セルフビルドによるコンクリートの砦に、最近はだいたい一年ごとに訪れているが、少しずつ工事が進んでいる。一方で周辺の再開発に対して、どのような対処をとるかの話し合いも動いている。ゆえに、完成する前から保存問題が起きているこの住宅が、どうなるかも興味深い。

2015/04/19(日)(五十嵐太郎)

尾形一郎/尾形優《タイルの家》

[東京都]

竣工:1998年

続いて、写真家の尾形一郎/尾形優による東京の家へ。もともと二人は建築家であり、まず最初にストイックなキューブの躯体をつくり、そこに展覧会を終えるごとに、作品として用いた世界各地の装飾的な細部が徐々に足されていく。彼らがテーマとしたウルトラ・バロック、メキシコのタイルや陶器、沖縄のブロック、額縁群、工事のときの足場などである。まさにアート作品としての建築と言えるだろう。

2015/04/19(日)(五十嵐太郎)

武井誠+鍋島千恵(TNA)《オビの家》

[東京都]

竣工:2012年

東京の家の近くでは、TNAによる住宅の現場が進行中だった。スロープが住宅の外周をぐるぐるとまわる構成である。場所を移動し、TNAによるオビの家へ。ここの施主と建築家をつなぐきっかけを筆者がつくったので、以前から訪れたかった場所である。住まわれ方を見ると、相性はよかったようだ。4m四方の白い部屋を四層縦に積んだ小さな家だが、周辺環境との関係から各サイドで壁を横にめくり、空間に想像以上の広がりと明かりをもたらす。おそらく、これは他の物件でも応用可能な形式である。

2015/04/19(日)(五十嵐太郎)

六角鬼丈《クレバスの家》

[東京都]

竣工:1967年

六角美瑠の案内で、父・鬼丈の処女作となる自邸、《クレバスの家》(1967)を見学する。名称どおり、小さな家の中央を一直線の割れ目が鮮やかに切り裂く。クレバスに沿って逆遠近法的な階段が展開しているが、遠くの風景を見せるためでもなく(住宅地なので、それは望めない)、高松次郎的でもなく、むしろ壁が迫る内向的な空間である。その後に六角が手がけた塚田邸の造形にも近いのが、個人的に発見だった。六角美瑠が隣に住宅を設計しており、現在、親子の建築が並んでいる。

2015/04/19(日)(五十嵐太郎)

プレビュー:Studio Exhivisit 2015 12スタジオと12の展覧会

会期:2015/04/29~2015/05/10

trace、punto、凸倉庫、うんとこスタジオ、ウズイチ・ウズマキスタジオ、山ノ内造形室、shima、Ink、G Art Studio、むこうスタジオ、淀スタジオ、共同アトリエ蓮華荘[京都府]

美大が多い京都では、若手アーティストを中心に、複数の作家で共同スタジオを構えるケースが少なくない。それらのうち12の共同スタジオが一斉に企画展を開催する。作家の制作場所を公開するオープンスタジオは以前から行なわれていたが、この「Studio Exhivisit」は更なる発展形として企画展を行うのが目新しいところ。また、公開イベントやワークショップ、カフェも催され、共同スタジオの可能性拡張を目指している。会場が市内一帯に分散しているので全部を見るのは大変だが、チャレンジしがいのある企画である。
ウェブサイト:http://www.studio-exhivisit2015.com/about.html

2015/04/20(月)(小吹隆文)

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