2021年12月01日号
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artscapeレビュー

2010年03月15日号のレビュー/プレビュー

本田征爾 展──箱夢語り

会期:2010/02/01~2010/02/13

乙画廊[大阪府]

札幌在住の作家・本田征爾。まぐろ調査船に長期乗船し、船上生活のなかで描いた水彩や色鉛筆の作品を発表して以来、最近はこの時期に毎年大阪で個展を開催している。現在、作家が暮らす北海道という土地もだが、私が経験したことのない光景や見たこともない生きものを目にしてきた彼の作品を見に行くといつも胸が躍る。今展では、色彩や技法など、テクニックの面での上達がうかがえた。また、これまでは、実在の海の生物からインスパイアされた、なんとも奇妙でグロテスクな生きものが数々描かれていたが、今展ではそれらに代わってネコや建物などをモチーフにした風景が描かれていて、内容にも変化が見られた。全体に洗練された印象がある反面、少し不気味でファンタスティックな独特の持ち味が薄れた気もした。今回、作家から話を聞かずに会場を後にしてしまい少し後悔。でも次回の個展を訪れるときの楽しみにしておこう。

2010/02/13(土)(酒井千穂)

ENK DE KRAMERと東邦フランチェスカ

会期:2010/02/08~2010/02/20

Oギャラリーeyes[大阪府]

長崎の原爆雲、被爆したマリア像などの写真を上から黒く塗りつぶす、激しいタッチのドローイング作品、別室には《Scope──私はフランチェスカを知らない》という血痕のついたおどろおどろしい作品も展示されていた。その名も東邦フランチェスカというアーティストグループ(?)なのだが、2009年に結成という以外はほとんど情報は非公開で、メンバーの性別も年齢も不明。ただなんとなく、まだ若い世代の作家なのではないかと思ったのは、現実感をともなわない既存の歴史観や、事実として伝えられる情報への違和感というもどかしい感覚を剥き出しに表現していたように思えたからだ。また、同じ空間に展示されていたベルギー在住の作家、エンク・デ・クラマーの作品の貫禄が印象的だったせいもある。夥しい数の線が確認できる銅版画は、近づいて見ていると、じわじわと重たさを増して染み込んでいくような色彩が印象的で、強い存在感がある。ただ、表現はまったく異なるが、どちらの作家の作品にも「見る」ということ自体を問うまっすぐな姿勢が表われていた。ともに異様な迫力を感じる作品だった。

2010/02/13(土)(酒井千穂)

京都市立芸術大学作品展

会期:2010/02/10~2010/02/14

京都市立芸術大学[京都府]

京都市立芸術大学の全学生が発表する毎年恒例の作品展。新鮮な印象の作品には今年はあまり出会えなかったが、それでも学生たちの制作意欲や発表に対する真摯な姿勢がうかがえて、見ていて清々しく楽しい。マンガ雑誌のコラージュを下地に、アクリル絵の具で色面構成した作品を発表していた油画コース4回生の奥村昌哉、修士2回生の村瀬裕子の、見立ての風景のように種子や野菜などの植物をモチーフに描いた作品が記憶に残った。また、一連の絵画の断片的な物語要素をつなぎ、想像を誘発する劇場的なインスタレーションを展開していたのが厚地朋子。現在開催中の「絵画の庭」展(国立国際美術館)では、昨年の学内展で発表されたものも展示されているが、それとはまったく異なるトリッキーな性質がうかがえた。ぜひいつか話を聞いてみたいと作家本人への興味も湧いてくる。

2010/02/14(日)(酒井千穂)

京都オープンスタジオ2010

会期:2010/02/10~2010/02/16

ライトスタジオ[京都府]

作家たちが日頃制作に使っているスタジオが作品展示をかねて同時期に開放される「京都オープンスタジオ」。2回目の今年は7つのスタジオが公開された。最初に訪れたのは京都市立芸術大学卒の作家たちが活動場にしている太秦の「ライトスタジオ」。学内展を見た後、ライブイベントが開催されると聞いて足を運んだ。かなり広いスペースだったが、2階で開催されていたライブは階段付近に観客があふれるほど賑わっていて驚いた。この日の訪問客はスタジオを使用している作家たちの友人、知人がほとんどだったのかも知れないが、作家やそこに集まる人たちが交流する和気あいあいとした雰囲気は、ギャラリーなどの発表空間でのそれとはまた違って良い感じだ。

2010/02/14(日)(酒井千穂)

京都オープンスタジオ2010

会期:2010/02/10~2010/02/15

うんとこスタジオ/桂スタジオほか[京都府]

公開期間の短かった2つのスタジオの最終日に間に合った。元薬局店舗の空間を利用したうんとこスタジオでは鈴木宏樹、谷澤紗和子、今村遼佑の作品展示。ちょうど一年ほど前、元立誠小学校で開催されたFIX展は、見る者の記憶を刺激するユニークな展示スタイルが印象的だったが、その展覧会の企画に携わっていたのもこの三人だった。他と比べると小さな空間だが、そのぶんそれぞれの個性がギュッと凝縮した空間は居心地悪いこともなく、ゆっくり楽しめた。その後、桂スタジオへ。黒川彰宣、柴田主馬、塩崎優、田中奈津子、岡田真希人、村上滋郎、風能奈々、水田寛の8名が利用する神社の向かいにあるプレハブ2階建ての共同スタジオ。大所帯だが、制作に向かうそれぞれの態度やその生々しさが一番感じられるスタジオだった気がする。そんな「オープンスタジオ」の醍醐味を感じるとともに、絵画っていいなあ、と改めて思わされる場所でもあった。水田寛は東京都現代美術館で開催中のMOT ANNUAL2010「装飾」にも出品している。

2010/02/15(月)(酒井千穂)

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