2017年06月15日号
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artscapeレビュー

Chim↑Pom展 LEVEL7 feat. 広島!!!!

2012年01月15日号

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会期:2011/12/10~2011/12/18

原爆の図丸木美術館[埼玉県]

丸木美術館で催されたChim↑Pomの展覧会。広島の原爆や福島の原発について彼らが表現してきた一連の作品が、丸木夫妻による《原爆の図》と同じ美術館で展示されたことの意義はとてつもなく大きい。《原爆の図》の圧倒的な重さと対比されることで、いままで以上にChim↑Pomの軽さの意味が際立って見えたからだ。これまでChim↑Pomの作品は不当にも軽佻浮薄な印象で判断されることが多かったが、それは必ずしも現在の若者文化を体現した彼らの佇まいに由来しているだけではない。原爆と同じ原子力エネルギーを「平和利用」することで繁栄してきた戦後社会が、そのような相対的な軽さを要請したのだ。その恩恵のもとで生まれ育ったChim↑Pomにとって、原子力は原爆という絶対的な暴力を告発するほど外部にあるものではなく、むしろ自分たちの内側に内蔵されているものだった。肉眼で見ることができない以上、重さを実感することができないといってもいい。だからこそ、それは絵画の対象になりうる重さを持ちえず、飛行機雲というたちまち雲散霧消してしまう軽薄なメディウムを選び取ったのではなかったか。もちろん原爆の被爆地へ赴いた丸木夫妻と同じように、Chim↑Pomも原発事故の現場に足を運んでいる。けれども、そこには建物の破壊こそあれ、大量死のような地獄絵図があるわけではなく、肝心の炉心さえ、いまだに誰も見ることができない。つまり放射能の被害は、いまのところ想像するしかない以上、想像力を使って思い描く空想の世界ではおのずと軽くならざるをえないのだ。広島と長崎に落とされた原爆が私たちの戦後史の出発点であり、なおかつ原爆美術の原点だったとすれば、Chim↑Pomが刻印したのはその「現在地」にほかならない。本展において、その両極が同時に示されたことによって、重い原爆美術から軽いそれへと変遷した過程を想像することができた。そのあいだを数々の視覚芸術によって架橋するのが、おそらく目黒区美術館が準備していた「原爆を視る」展なのだろう。このほど正式に中止が決定されたようだが、時期と場所を改めて開催することが大いに待望される。

2011/12/14(水)(福住廉)

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