2019年10月15日号
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artscapeレビュー

2012年04月01日号のレビュー/プレビュー

ようこそ! サン・チャイルド

会期:2012/03/11

阪急南茨木駅前(南側)[大阪府]

彫刻家のヤノベケンジが制作した全長6.2メートルの大作《サン・チャイルド》が大阪府茨木市の阪急南茨木駅前に恒久設置されることになり、その除幕式とイベントが行なわれた。《サン・チャイルド》は昨年10月に万博記念公園の《太陽の塔》の前で初お披露目され、東京の岡本太郎記念館でも展示されている。その姿はヤノベの代表作《アトムスーツ》を着た子どもで、ヘルメットを脱いで放射能が去った未来を見据えている。ポーズはミケランジェロの《ダビデ像》から引用しているが、これはダビデが巨大な敵ゴリアテを倒したエピソードに倣ったものだ。また設置場所の南茨木駅前はモノレールで万博記念公園と繋がっており、ヤノベの創作の原点である1970年大阪万博と《太陽の塔》にリンクしている。当日は、午前中に吹奏楽のファンファーレ~除幕式~市長挨拶といった式典が行なわれ、午後からはお笑い芸人で美術コレクターとしても知られるおかけんたの司会により多数のイベントが行なわれた。また、地元商店会の屋台が多数出店したこともあり、駅前ロータリーはラッシュアワー並みの大入り満員となった。地域の活性化にも貢献したことで、《サン・チャイルド》のお披露目は大成功だった。今後長きにわたって地元のシンボル的存在になるであろう。

2012/03/11(日)(小吹隆文)

kokeshi pop──ポップでカワイイこけしの世界

会期:2012/03/02~2012/03/12

PARCO MUSEUM[東京都]

第3次こけしブームなのだそうだ。最初のブームは第二次大戦前。地域によって形も呼び名も異なっていた木製のお土産品が1940年に「こけし」の名前で統一された。第2次のブームは戦後1960年前後から始まる。千趣会の前身である「味楽会」がこけしの頒布会である「こけし千体趣味蒐集の会」を始めたのが、1954年。1959年には第一回の「全国こけしコンクール」が開催されている。そして、2009年前後から、それまでの蒐集家とは異なる20代30代の女性を中心に、第3次のこけしブームが始まったようである。2010年4月には『kokeshi book──伝統こけしのデザイン』(青幻舎)が刊行され、ヒット。このブームのさなかに東日本大震災が起きたことで、おもに東北地方でつくられているこけしの蒐集には復興支援という活動も加わった。2009年に鎌倉にこけしとマトリョーシカの店「コケーシカ」を開いた写真家・詩人の沼田元氣は、雑誌『こけし時代』を創刊。『kokeshi book』を制作したデザイン・ユニットCOCHAEはリサイクルこけしの販売による利益を震災の義援金として寄付する活動を行なう。「KOKESHIEN!」(こけし+支援)プロジェクトを主催し、2011年12月にはメキシコでもこけしの展覧会を開催した(2011/12/05~12/10)。ほかにも、横浜人形の家では震災復興を支援する「こけしとその仲間たち」展(2011/11/12~12/18)が、滋賀県・観峰館では「ガンバロウ日本!! 東北伝統こけし展」(2012/02/01~03/20)が開催されている。六本木アートナイト2012にはYotta Grooveによる巨大こけし《花子》が登場(2012/03/24~03/25)。4月3日からは福島市の西田記念館で「WE LOVE KOKESHI!」展が開催される(2012/04/03~07/31)。
 「kokeshi pop」展はCOCHAEが企画協力するこけしの展覧会。「ポップでカワイイこけしの世界」というタイトルのとおり、明るい色彩、ポップなショーケースに収められたこけしたちは、伝統工芸品でありながらも、新しい魅力を見せてくれている。東北各地の工人(職人)による作品ばかりではない。こけしといえば、体験絵付け。しりあがり寿、安齋肇ら漫画家やイラストレーターが絵付けをしたこけしも楽しい。また、こけし蒐集家でもあった童画家・武井武雄が描いたこけしを紹介するコーナーも設けられ、展覧会にあわせて『武井武雄のこけし』(cochae編、パイインターナショナル、2012)も刊行された。
 先行して開催された大阪・梅田ロフト会場(2011/12/28~2012/01/17)には20日間で1万6,000人★1、東京・渋谷パルコ(2012/03/02~2012/03/12)には10日間で1万2,000人★2が訪れたという。展覧会は名古屋パルコ(2012/04/06~04/23)にも巡回する。ブームを盛り上げ、さらに新たな層を取り込んでゆく。「目にする機会が減ったから魅力を知らないだけ。ならば、目にする機会を増やせばいい」★3というCOCHAEの活動は、伝統工芸振興のひとつのモデルにもなりうるのではないだろうか。[新川徳彦]

★1──『産経新聞』2012年3月5日、東京朝刊、東京ニュース面。
★2──『読売新聞』2012年3月22日、朝刊、17頁。
★3──『朝日新聞』2011年12月2日、夕刊、11頁。

2012/03/12(月)(SYNK)

FUKAIPRODUCE羽衣『耳のトンネル』

会期:2012/03/09~2012/03/19

こまばアゴラ劇場[東京都]

女性主体の劇団による公演には、それ以外の大多数の演劇にはないなにかがあって、そこには演劇というものの通念をひっくり返す力が見え隠れしている。定型のフェミニズム的な批判意識を彼女たちに見ているというわけではない。ぼく個人の偏見なのかもしれないけれど、快快なり、バナナ学園純情乙女組なり、またこのFUKAIPRODUCE羽衣(作・演出・音楽は男性の糸井幸之介、でもプロデュースは深井順子で、彼女の磁力はとても強く舞台で作用している)なりを見ると、「ふざけているのか!」なんて思わされつつ、そんな思いこそ「正しい演劇」というよく考えればくだらないマッチョな規範意識に縛られているだけではと反省させられるくらい、驚くようなダイナミズムに圧倒させられることがよくある。藤田貴大(マームとジプシー)や柴幸男(ままごと)が戯曲で女性の生活を丁寧に扱いつつ、上演形式においては今日の演劇動向にきわめて「正しく」応答しているのと対照的に、彼女たちはそうした正しさとはほとんど無縁に、それよりも自分たちにとって大事なことを優先させている気がする。
 本作もまさにそんな作品で、深井曰く「がっつり系」の芝居は大声でオーバー・アクションの元気な演技。ミュージカル(レビュー)仕立ても手伝って観客は失笑と微笑で応じてしまう。こうした脱力は、観客に批評意識という武装態度の解除をうながしているようだ。物語は他愛ない。恐ろしいほどにあっけらかんと性(欲)が描かれる点で、その根底にあるのはしかし、母性的なものである。冒頭は、おっぱい吸いたい男子が赤子のようになると、女子も母のようになって自分の乳を捧げる。中盤には中学生の恋愛が描かれ、終盤には中年になった男の旅が描かれる。恋愛物語は「リア充」と称されバリアになりかねないが、最終的に母性的なものが充満していくことで、すべての人の癒しへ転換する。舞台にも本人役で登場していた深井の存在感こそ、なにより母性的なものを帯びていた。快快にもバナナ学園純情乙女組にも程度は違えども感じることなのだけれど、彼女たちの観客へ向けた歓待の態度は観客との「つながり」を強く望んでいるようだ。観客を強く抱き、一体化し、それによってなにをしようというのか、それはまだ見えない。

2012/03/12(月)(木村覚)

『ヒューゴの不思議な発明』

会期:2012/03/01

TOHOシネマ梅田ほか[大阪府]

1888年に世界最初の映画カメラ「キネトグラフ」がトマス・エジソンによって開発されているが、リュミエール兄弟が「シネマトグラフ」をつくり、1895年12日28日に観客の前で動く映像を映したことを基準にするなら、映画はその誕生からわずか110年あまりの、(エジソンにしろ、リュミエール兄弟にしろ)新しい芸術ジャンルである。しかし、その変貌は他の芸術ジャンルに比べ、より激しく、独自性を保証する基盤はときに脆い。脆いとは、他の芸術ジャンル、例えば、文学、美術、音楽、メディアアートとの関係において影響されやすく、その土台が揺らぎやすいという意味だ。それはともかく、この頃、映画へのノスタルジーを感じさせる映画が目につく。本年度アカデミー賞の作品賞を受賞した『アーティスト』や(まだ観ていないが)、今回紹介する『ヒューゴの不思議な発明』がそうだ。本作で巨匠マーティン・スコセッシ監督は思いっきり初期映画への、そしてジョルジュ・メリエスへのオマージュを送っている。無声からトーキーへ、2Dから3Dへと、変貌の激しさと土台の脆さを克服するために、スコセッシ監督は映画の本質を、その楽しさを再考したかったのかもしれない。メリエスが舞台に立ち、彼の映画が映し出される場面では、正直、胸がじんとした。ただ、スペクタクルを望むなら、あるいは物語の面白さを期待するなら、他の映画をオススメしたい。[金相美]

2012/03/14(水)(SYNK)

「遠くて、近すぎる ドミニク・レイマン」展

会期:2012/03/06~2012/03/25

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

3点の映像作品が出品された。2点は壁面に直接投影され、1点は絵画に映像を投影している。40秒ごとに人物が登場しては暗闇に吸い込まれていく《Let me Jump》という作品に軽い恐怖感を覚えた。40秒という単位は、世界で40秒ごとに誰かが自殺をしているというWHOの発表によるものらしい。残り2点は、スカイダイビングのチームが空中で大聖堂の天井を表現する様子を捉えた《60 sec. Cathedral》と、警察犬の訓練の噛まれ役の姿を抜き出した《Basic Training(bunraku)》だった。

2012/03/14(水)(小吹隆文)

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