2019年11月15日号
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artscapeレビュー

2012年04月01日号のレビュー/プレビュー

第15回岡本太郎現代芸術賞展

会期:2012/02/04~2012/04/08

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

岡本太郎現代芸術賞といえば、いまや日本の若手アーティストたちにとっての登竜門としてすっかり定着しているが、ここ数年の受賞作の傾向は全般的に定型化されている印象が否めない。それが自らの様式に呪縛されていった晩年の岡本太郎を彷彿させることはともかく、いずれにせよ審査員の全面的な入れ替えを断行しない限り、例えば「動脈硬化」に陥って久しいVOCA展やシェル美術賞と同じような末路をたどることは目に見えている。どういうわけか、選考する権力に固執する美術評論家や学芸員が多いが、おのれの存在が状況の停滞を招いているという客観的な事実が見えないようであれば、同時代の美術の動向を的確に見抜くことなどできるはずがないではないか。このようなコンクール展で頻出する、ある種の「遅さ」は、年に一度催されるという制度に端を発していると言われることが多いが、じつは、ひとえに選考する者自身の眼力に由来しているのである。
そのことを踏まえたうえで、なお本展で注目したのは、千葉和成。これまでダンテの『神曲』を現代的に解釈した作品を制作してきたそうだが、今回は東日本大震災における津波や地震、原発事故をモチーフとして盛り込んだ平面と立体を発表した。福島第一原発の地下に巣食う怪物によってメルトダウンの悪魔的な光景を描写した立体作品の迫力に比べると、平面作品は全体的に画面の構成が粗く、随所に仕掛けられたユーモアも逆効果に終わっているという難点がないわけではない。ただ、そうだとしても、画面の四方八方を貫く執拗な粘度は見る者の視線を惹きつけるには十分すぎるほどであり、これが近年の絵画に大きく欠落している特質であることには変わりがない。時事的な主題を強引に作品に取り込み、自らの世界観を更新してみせた力技も、評価できる。

2012/03/16(金)(福住廉)

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山根秀信 個展「風景」

会期:2012/03/12~2012/03/17

Gallery K[東京都]

山口市在住で、昨年の第65回山口県展大賞を受賞した山根秀信の個展。宅地造成した土地に住宅が点在する寂寥感のある風景を平面に描いてきたが、今回の個展では、それに加えて、米粒を敷き詰めたジオラマ作品も発表した。壁面に展示された水彩の鮮やかな彩りと白で覆われた床面の対比が美しい。しかもこれらの米粒はすべて山根が自ら育て、収穫したもので、それらを納めていた米袋も平面作品とあわせて壁面に展示されていた。それらを見ていると、食であろうと芸術であろうと街であろうと、人間は太古の昔より自然の恵みから多くを負ってきたという厳然たる事実を改めて思い知らされる。都市社会が成熟した反面、その暗部がまざまざと浮き彫りになっているいま、この食と芸術と都市が一体となった原点に回帰することが求められているのではないか。

2012/03/16(金)(福住廉)

アール・デコの女性と装飾

会期:2012/02/04~2012/04/01

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

のちにアール・デコ様式の時代と呼ばれる1920年代と30年代のポスター芸術に焦点を当てた収蔵品展である。とくに印象的なのは、ムーラン・ルージュの踊り子ミスタンゲット(Mistinguett, 1873-1956)を描いたポスター。シャルル・ジェスマール(Charles Gesmar, 1900-1928)が描いたミスタンゲットの巨大なポスター(1928年、314×113cm)は少女漫画を彷彿とさせる華やかさ[図]。このときミスタンゲットは55歳。少女のようなその姿は、絵画ゆえの誇張ではなく、実際にも年齢を感じさせないパワフルなダンス、チャーミングな表情で人々を魅了していたという。ジェスマールはミスタンゲットのお気に入りのデザイナーで、多数のポスターのほか、彼女のステージ衣装も手掛けていた。1928年にジェスマールが急死したあと、他のデザイナーたちがジェスマールの様式を引き継いでミスタンゲットのポスターを制作してゆく。本展にはジェスマールが手掛けた作品3点と、他のデザイナーが手掛けた作品6点のミスタンゲットのポスターが出品されている。一人の女性を描いたポスターを並べることで、作家による違いにとどまらず、アール・デコ様式の内包する多様性と共通性を比較してみることができる。[新川徳彦]

画像提供=川崎市市民ミュージアム

2012/03/17(土)(SYNK)

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昔のくらし 今のくらし

会期:2012/01/24~2012/04/01

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

室内アンテナのついた四本足の白黒テレビ、青い羽の扇風機、畳にちゃぶ台、黒電話、足踏み式ミシン……。ミュージアム附属レストランではクジラの竜田揚げなど、昔の給食メニューを食べることができる。ついつい「三丁目の夕日」的な感傷に浸ってしまうけれども、本来の趣旨は小学校3年生が学ぶ「昔の道具とくらし」カリキュラムのための企画として毎年この時期に開催されている展覧会で、衣・食・住の移り変わりを実物資料で辿る。会期中には小学生の団体が訪れるが、おそらく大人たちとはまったく異なる感想を抱くことだろう。
 授業のカリキュラムとしてつくられているので、コアとなる部分は毎年同じなのだが、それだけではなく、年ごとに異なる展示が設けられている。昨年の特集は学校給食。今年の特集テーマはふたつ。ひとつは夏を涼しく、冬を暖かく過ごすための生活の工夫。夏の団扇や扇風機、蚊帳や陶器の枕、冬の火鉢、湯たんぽや懐炉など。もうひとつは、病気や災害に備えるもの。消防団が使用していた手押しポンプ、纏、厄除けのお守りや薬箱など。いずれも昨年の東日本大震災をふまえて、節電や防災の知恵や工夫を過去に学ぼうというものである。歴史を見る眼は時代と密接に結びついている。そして危機にあってこそ歴史に学ぶことは多いのである。[新川徳彦]

2012/03/17(土)(SYNK)

ROGUES' GALLERY 農民車ショー

会期:2012/03/16~2012/03/25

コーポ北加賀屋[大阪府]

オリジナルのサウンドシステムを備えた改造車を用いたパフォーマンスなどで知られるROGUES' GALLERYが、ユニークな新作《農民車》を披露した。農民車とは、兵庫県淡路島の三原地区を中心としたエリアで農作物の運搬などに用いられている動力付きの改造車両である。その独特な文化に魅せられた彼らは、淡路島で教えを乞い、自分たちの手で農民車をつくり上げてしまった。会場には農民車1台と、記録写真をまとめた書籍、車両制作に用いた道具類が展示されていた。また、会期中の土日祝日には試走会も実施された。農民車はアートなのかと問われたら、正直、微妙な気もする。しかし、そこにはアートの原点とも言うべき物づくりの楽しさ、喜びの感情が充満しており、それだけでもう十分ではないかと思う。

2012/03/18(日)(小吹隆文)

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