artscapeレビュー
2013年06月15日号のレビュー/プレビュー
フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展
会期:2013/04/24~2013/07/15
国立新美術館[東京都]
国立新美術館「フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣」展へ。五感をテーマとする、6連作のタピストリーをまるごと日本に持ってくるとは、驚くべき企画である。細い通路を経て、これらがぐるりと来場者を取り囲む部屋に導く、展示デザインも効果的かつ印象的だった。他の空間では、これを読み解くための関連資料などを紹介する。描かれた動物がキャラ化しやすいこともあり、関連グッズの多さも桁外れだった。
2013/05/19(日)(五十嵐太郎)
カリフォルニア・デザイン 1930-1965─モダン・リヴィングの起源─
会期:2013/03/20~2013/06/03
国立新美術館[東京都]
同じく国立新美の「カリフォルニア・デザイン 1930-1965─モダン・リヴィングの起源─」は、元気で幸福だったアメリカのミッドセンチュリーのデザインを紹介する。10年ほど前にブームが起きたイームズ夫妻はすでに有名だが、まだまだ知らない人がいっぱいいるものだ。建築、家具、写真、ファッション、工芸など、多分野を横断する楽しい展示である。ちらちら向こうが見える開放的な間仕切りは、中村竜治のデザインによるもの。
2013/05/19(日)(五十嵐太郎)
LOVE展:アートにみる愛のかたち─シャガールから草間彌生、初音ミクまで
会期:2013/04/26~2013/09/01
森美術館[東京都]
森美術館のLOVE展へ。ものすごく作品が多い。最初の部屋こそは、ジェフ・クーンズやロバート・インディアナを核にすえ、「LOVE」のメッセージが明快だが、近代美術から最後は初音ミクまであって、全体としてはテーマが散漫になり、広がり過ぎの印象を受けた。あいちトリエンナーレ2013に参加するアルフレッド・ジャーも、被災地のリサーチをもとにして、石巻の仮設住宅と南三陸の防災庁舎の写真による作品を出品している。
2013/05/19(日)(五十嵐太郎)
田代一倫「はまゆりの頃に 2012年 冬」
会期:2013/05/02~2013/06/02
photographers' gallery / KULA PHOTO GALLERY[東京都]
田代一倫が東日本大震災直後の2011年4月から撮り始めたのが「はまゆりの頃に」のシリーズ。東北各地を歩き回り、そこで出会った人たちに声をかけ、カメラに正対したポーズでシャッターを切る。被写体の周囲の状況をなるべく取り入れ、画面の中央に全身像をおさめるスタイルは、最初からまったく変わっていない。60×50.8センチのサイズにプリントし、展覧会の会場に並べられた写真には、撮影した日付と場所のデータが添えられているだけだが、同時に制作されるポートフォリオブックには、田代と交わした会話や彼の感想などの短いコメントが付されている。このテキストと写真との微妙な関係のあり方も、ずっと同じ形で続いてきている。
photographers' gallery とKULA PHOTO GALLERYで、季節を追って開催されてきた展覧会も回を重ね、撮影したモデルの数も1,100人を超えたそうだ。ずっと写真を見続けていると、田代の被写体との向き合い方が少しずつ変わってきたように思えてくる。震災の被災者だけではなく。前回くらいから、以前はあえて避けてきた「風俗」関係の店で働く人たちにもカメラを向けるようになった。今回は福島県福島市、いわき市、南相馬市などで撮影した写真が並んでいるが、KULA PHOTO GALLERYの展示はすべて「東京電力・福島第一原子力発電所作業員」のポートレートだ。青いビニールの作業衣を身につけた男たちが、時には満面の笑顔を見せて写っている。田代の撮影の姿勢が、より柔らかで広がりを持つものになり、写真とテキストの説得力も増してきているのだ。
写真シリーズとして、ほぼ完成されてきたのではないかと思っていたら、田代自身もそろそろ写真集にまとめたいという気持ちでいるようだ。秋に刊行予定で、もう編集作業に入っているという。1,000人以上のポートレートをすべておさめるには、相当無理をしなければならないかもしれないかもしれないが、彼のまっすぐな写真がもつ気持ちのよさを、しっかりと伝えてくれる写真集になってほしいと思う。
2013/05/21(火)(飯沢耕太郎)
さすらいの日本画展
会期:2013/05/20~2013/05/25
吉田町画廊[神奈川県]
タイトルから察するに、一匹狼の無頼派による根無し草的な展示かと思ったら、ぜんぜんそんなことはなく、女子多数の日本画小品展だった。「さすらい」とは銀座の画廊へ巡回するかららしい。もっと各人しっかりさすらってほしい。
2013/05/23(木)(村田真)