artscapeレビュー

2016年10月15日号のレビュー/プレビュー

studio velocity《まちに架かる6枚屋根の家》

[愛知県]

竣工:2016年

studio velocityが名古屋で設計した《まちに架かる6枚屋根の家》を見学する。彼らとしては、これまでにやったことがない傾斜屋根+軒が出る新しい形態操作を行ないつつ、凹凸のある平屋のプランで全方位的に開放性を獲得する。塀がないことや隣の敷地が空っぽであることで、開放的な空間がより強調される。これは住宅だが、屋根の重なる街のような風景が室内から得られる。彼らの作品《都市にひらいていく家》を見た施主が、この仕事を依頼したらしい。

2016/09/24(土)(五十嵐太郎)

河文

[愛知県]

夜は料亭の河文にて食事をいただく。有名な水鏡の間ではないが、その向かいの部屋で食事後に若女将による説明と案内をしてもらう。数年前、バリアフリーや結婚式に対応する工事などで内装が変わった部分も少なくないが、水鏡の間を設計した谷口吉郎と名鉄の関係、息子の谷口吉生に水を使うデザインが継承されたことを改めて感じる。ちなみに、流政之は自ら庭への作品の設置を申し出たという。

2016/09/24(土)(五十嵐太郎)

日吉台地下壕

[東京都]

この春、慶応のセンセーたちの飲み会で、日吉校舎の下にある地下壕の話題になって、毎月見学会が開かれているので見に行こうって話になった。見学会の主催は日吉台地下壕保存の会。この地下壕は第2次大戦末期の1944年9月から海軍連合艦隊司令部として使われ、特攻作戦や沖縄戦の命令はここから出されたという。次世代に伝えるべき戦争遺跡なのだ。参加者はわれわれ4、5人だけかと思ったら、なんと近所(たぶん)のじーちゃんばーちゃんを中心に50人ほど集まった。みんな関心が高いんだ。あいにくの雨のなか、慶応高校の横を通り、蝮谷体育館近くの鉄の扉を開けて地下壕に入る。最初は数十メートルの下り坂。洞窟みたいなワイルドな空間を想定していたが、床も壁も天井も(カマボコ型なので壁と天井の区別はないが)コンクリートで舗装?され、快適とはいえないまでもちゃんと整備されている。奥へ進むと機械室、電信室、司令長官室などがあるが、どれもカマボコ型のトンネルでドアも窓もないため見分けがつかない。内部には横道がたくさんあり、ひとりで入ったらさぞかし怖いだろうなあ。地上に出て、軍令部第3部(情報部)も使ったというチャペルや、巨大キノコみたいな耐弾式竪坑なども見学。戦争遺跡は身近に残っているのだ。

2016/09/24(土)(村田真)

岡本光博 69

会期:2016/09/10~2016/10/08

eitoeiko[東京都]

某ヴィトン社のモノグラム入りのバッグでバッタをつくった《バッタもん》をはじめ、漫画「ワンピース」のキャラクター人形をつなげてワンピースに仕立てた《ワンピース・ワンピ》、奈良某の犬に軍帽を被せてガマグチにした《犬死》(村上某のDOB君を逆さまにした《BOD君》もある)、放射能汚染廃棄土を入れる黒いバッグに目玉をつけた《モレシャン》、福島県に山積みされているそのバッグに目玉をつけて撮影した《モレシャンズ》……。徹底して権威をこき下ろし、禁忌に挑戦している。しかもそれを嘲笑に変えている。これはアートのひとつの原点ですね。どこか彼の回顧展をやってみようという美術館はないだろうか。でもやったら最後、“自爆展”になりかねないが。

2016/09/24(土)(村田真)

プレビュー:Ocean Currents

会期:2016/11/12~2016/12/11

瑞雲庵、Gallery PARC[京都府]

今号のレビューでも取り上げたアーティスト・山本聖子のキュレーションによるグループ展「Ocean Currents」。築100年を超える古民家・瑞雲庵と、Gallery PARCの2会場で同時開催される。出品作家はロベルト・デ・ラ・トーレ、ソン・サンヒ、岩熊力也、山本聖子。「メキシコ、韓国、日本という異なる国々の作家が京都に集まり、それぞれの文脈の中で日本を見つめ、同時代を生きるものとして何を思うのかを探る試み」であるという。山本は海外レジデンス経験をきっかけに、「色」を手がかりとして、文化や価値観の多様性/混交性/均質性について考察し、ナショナリティの自明性を問い直すような表現を行なっている。本グループ展では、「今の日本」への客観的な眼差しと、視線の多層性が浮かび上がる試みになるのではと期待される。

写真:PETER ENGLAND / D.R. © Roberto de la Torre.(Photo: Prince Shah, Lakeerenm Contemporary Art Gallery, Mumbay, India, 2013

□ 会期:2016/11/12~2016/12/11
会場:瑞雲庵
□ 会期:2016/11/19~2016/12/04
会場:Gallery PARC

2016/09/25(日)(高嶋慈)

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