artscapeレビュー
2009年10月15日号のレビュー/プレビュー
井川優子 展
会期:2009/09/01~2009/09/06
アートスペース虹[京都府]
まる一日かけて定点撮影した遊園地の観覧車。その写真コピーをちぎり、アームの部分が一本の線になるように張り合わせた作品が、ガラス戸の入口をのぞく壁面をぐるりと一周するように展示されていた。撮影時間順につなぎあわされているため、朝から夕暮れまでの空の微妙な変化もうかがえる。模様のようにも見えるが、その緩やかな色の変化とリズミカルなイメージが音符が並ぶ楽譜を思わせるし、「時間」を切り取り、イメージを構成するという作品は実際に音楽みたいだ。ほかに、スイカや人参の表面を撮影した写真をつなぎ合わせて一本の線にした作品もあった。教えられなければ、どこかの高原の地平線を写した風景写真のようにしか見えない。前回は、地図の島の海岸線部分を切り取ってつなぎ合わせ、架空の「島」に作り替えていた井川。空想を拡げながらちまちまとした手元の作業にひとり没頭する作家の姿が眼に浮かぶ。彼女の作品は、なによりそれがいつも楽しい。
2009/09/06(日)(酒井千穂)
西村正幸 展「いのちの水」
会期:2009/09/01~2009/09/13
ギャラリーすずき[京都府]
戦争に巻き込まれたイラクの子どもたち、空を飛ぶ鳥、生命を育む水が描かれた作品には、生きることそのものへの作家の切なる想いや祈りが込められている。絵そのものは素朴で、画面の澄んだ水色がじわりじわりと染み込んでくるような清らかなイメージ。それがかえってあらゆる生命にかかわる尊厳という言葉を連想させる。
2009/09/06(日)(酒井千穂)
佐川好弘展「FUJI ART FESTIVAL ‘09」
会期:2009/09/01~2009/09/06
GALLERYはねうさぎ[京都府]
5月に開催された元・立誠小学校での「放課後の展覧会」では会場の体育館で、セリフの書かれたマンガの吹き出し風のパネルや立体文字の大型作品を発表していた。今回は《解キ放テ》という立体文字の作品を背中にしょって富士山に登った記録映像とその作品を公開。やっていること自体は馬鹿馬鹿しいが、それゆえに見ず知らずの登山客とのあいだにコミュニケーションを発生させる装置となり、多くの人の好奇心をかきたてたという事実が面白い。
2009/09/06(日)(酒井千穂)
版画がつくる 驚異の部屋へようこそ!展
会期:2009/08/08~2009/09/23
町田市立国際版画美術館[東京都]
版画にはあまり興味がないのでこの美術館にはあまり足を運ばないが、今回は喜び勇んで駆けつけた。というわりに会期も半ばをすぎているのは、こんな展覧会をやってることすら知らなかったからだ。ヴンダーカマー同好会(いま設立)としてはもっと宣伝してほしいし、カタログもつくってほしかった。16~17世紀ヨーロッパの王侯貴族のあいだで流行した、科学と魔術と芸術の未分化なヴンダーカマー(驚異の部屋)の雰囲気を伝える版画をはじめ、キルヒャーの『シナ図説』、ヨンストンの『動物図譜』、18世紀の人体解剖図、ソーントンの植物誌『フローラの神殿』など、澁澤龍彦ならずとも狂喜しそうな博物図譜が並んでいる。さすが版画美術館、こんなのももってるとは。
2009/09/08(火)(村田真)
小沢剛──透明ランナーは走りつづける
会期:2009/08/01~2009/09/27
広島市現代美術館[広島県]
《地蔵建立》《なすび画廊》《ベジタブル・ウェポン》などなじみのある作品から、初めて見る《天空からの絨毯》と新作《広島・比治山七不思議》まで、20年の活動を回顧。こうやって見ると、かつてのヌケてたところが抜けてきて、なんか社会派っぽくなりつつあるんじゃないか。
2009/09/10(木)(村田真)