2021年10月15日号
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artscapeレビュー

安田佐智種「AERIAL」

2012年03月15日号

会期:2012/01/13~2012/02/29

BASE GALLERY[東京都]

安田佐智種は1968年生まれ。東京藝術大学大学院修了後に渡米して、現在はニューヨークを拠点に活動している。彼女の初期作品に、透明なガラスの板のようなものに支えられた足の裏から、上空を見上げるアングルで撮影されたシリーズがあり、その身体を介した視点の転換の鮮やかさを印象深く覚えている。この新作「AERIAL」も、その延長線上の作品と言えなくもない。今度は旧作とは逆に、高層ビルのような高い場所から下を見おろす視点をとる。しかもそうやって撮影された300~500枚の画像を、コンピュータによる画像処理でコラージュし、ビル群が針の山のように地面から空中に突き出ている様を、圧倒的な視覚効果で定着している。安田のアイディアを形にしていく能力の高さがよく示されている作品と言えるだろう。
ただその処理の仕方が、あまりにも手際がよすぎるので、高所から下を見おろしたときの目眩や恐怖をともなう身体感覚が、やや希薄になっているように感じられた。画像処理がパターン化して、デザイン的に見えなくもないのだ。よく見ると、針のように突き出ているビル群の根元のところに、四角い空白のスペースが残っている。これがつまり、安田が下を見おろす基点となる場所ということだろう。足場となる場所が不在の空白として表現されてしまうというのは、なかなか面白いパラドックスだ。そのことを逆手にとって、その真白のスペースをより強調する表現のあり方も考えられるのではないだろうか。

2012/02/01(水)(飯沢耕太郎)

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